ほか

□悪いのは、夏
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倉持!と名前を呼ばれて振り返ると俺はギョッとした。


「お前、その格好!」
「ん?」


何が何だかわからないという顔をしたなまえ。
なまえと真っ赤であろう俺を交互に見てニヤニヤ笑っている御幸。


「御幸、見てんじゃねぇ!なまえちょっと来い」
「え、何?」


俺は腕を掴み寮へと連れていき、大きめのタオルを引っ張り出すと、なまえの体を包んだ。


「そんな格好でふらついてんなよ」
「え?」
「下着透けてんぞ」
「うそ!」


嘘ではない。
白い体操服は濡れたせいで体に張り付き、ブラが透けている。
自分の姿を確認したなまえは青ざめた。


「うわ、これじゃ控え目な露出狂じゃん」
「何言ってんだ馬鹿!つか、何でそんなに濡れてんだよ」
「暑いから亮介先輩達と水浴びしてたんだけど、私のことばかり攻撃するんだもん」


自然と溜め息が溢れる。
水浴びと言っても一方的に水を掛けられていたのだろう。
相手が相手なのでそうなることは想定出来たはずだ。


「ほら」
「な、何よ」
「脱げ」
「はぁ?」
「風邪ひくだろ」
「夏だし大丈夫だよ。着替え更衣室だし」


そうじゃなくて、と言葉を区切る。
こいつはちっとも分かってない。


「好きな女がそういう格好してたらやべぇだろ」
「…?何言ってんの?」
「察しろよ、馬鹿。襲われてーの?」


御幸のようにニヤニヤとした笑みを貼り付けて言えば顔を真っ赤にした。


「…バカもち」
「ヒャハ、倉持だっての」
「バカもちアホいち」
「口塞ぐぞ、オラ」









(ちょっと倉持、着替えは?)
(据え膳食わぬは男の恥って言うだろ)
(は?)
(んな格好してるお前が悪い)



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