短編
□さよならも言わせてくれない
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ぎちり、と。
包み込んでいた手が、爪を立ててきた。
「俄雨が私を嫌いだなんておかしいよ。あり得ない、狂ってる、壊れてる、ねじ曲がってる」
自分も好きだから、相手も好きだなんて。
なんて勝手な人なんだろう。
「どうしてそんな悲しい事を言うの、どうしてそんな辛い事を言うの、どうしてそんな」
ぐちり。
「殺したくなるような、事を言うの?」
爪が肉に食い込み、そこから激痛と畏怖と恐怖と嫌悪感に侵食される。
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