長文部屋

□マフィアと泥棒
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ーイタリア某日の朝刊より


『先日、イタリア大手企業ペスカ社の研究員の手により幻の人形と言われていた“氷の雛人形”が発掘されました。この人形は、その呼び名の通り氷で出来ているのですが、制作されて何世紀も経っているにも関わらず、今もなお、その当時と変わらない姿であり続けているという不思議なー』


「ーんで、この“氷の雛人形”とやらが一体何だって言うんだ、ルパン」


そう問うたのは次元大介ーその人である。


ここは、イタリアにある彼らの隠れ家の一つであり、次元は長年の相棒である目の前でのんびりとくつろいでいる男に呼び出されてここにいた。


来るなり押し付けられたのは、この辺り一の新聞社の朝刊のスクラップ。 ご丁寧に今日の日付けのものだ。


ーそこで、先程の一言に戻るわけだ。確かに溶けない氷やそれで作られた人形は珍しいだろうが、所詮は人形。これの何がこの大泥棒の琴線に触れたのであろうか。


問われた方の男ールパン三世ーは、もったいをつけるような口振りで話し始めた。


「実はな、次元。この人形が問題じゃぁないんだ。獲物はその中の物ってわけさ」


「…どういうことだ?」


訝しげに問う相棒の姿に「ククッ」と笑い乍ら、ルパンはそれはそれは楽しそうに話しを続けた。


「何でもな、その“中身”を手に入れればなーーー」
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