短文部屋
□餅を焼いて修羅を燃やす
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綱吉が走り戻って来たのは、アジトの中で今最も落ち着く場所の一つである執務室である。
妙にフカフカのイスにバフンと座り、悶々としていた。
「失礼します」と控え目にノックをした後、何も知らない獄寺が入ってくる。
彼は、自分の仕事が早めに終わったので、敬愛する綱吉のために執務を手伝おうとやってきたのだ。
…執務室に来たはいいが、綱吉がフリーズしてしまっている。
獄寺は、何をしたら良いか綱吉に尋ねたいが、今、彼に話しかけてはいけない、本能的にそう思って、そっとしておこうと思い立ち、取り合えず書類の整理をし始めた。
…ここでやっと冒頭に戻る訳である。
綱吉の中には、なんだかモヤモヤっとした気持ちがあり、その気持ちは『つまらない』という感情に似ていた。
そして、そんな気持ちが溜まりに溜まって、最終的には、
キレた。
「獄寺くんっ!!」「 はっ、はい!!!」
キレた勢いそのまま獄寺を呼んだので、呼ばれた方は背筋をシャキッと伸ばし、声を裏返させながら返事をした。
「俺、用事が出来たから 後、よろしく」
「えっ、ちょ!!!」
獄寺が返事を返す前に、さっと綱吉の姿は消え去った。
執務室の机の上には、書類のヒマラヤ山脈(!?)が出来ていた。
「十代目ぇ〜〜」
獄寺は嘆いた。
コレを全部 片付けろというのですか?((涙がホロリ
キレてしまった綱吉は、取り合えず雲雀から事情を聞こう(そして、その後…フフフ)なんて考え、雲雀を探していた。
その時ー
ガッシャーーーーーーーーーン!!!!!
大きな破壊音が、1階の中庭辺りから聞こえてきた。
ガラッ シュッ ピシッ ガツーーン ドーーーーン
破壊音は立て続けに聞こえてくる。
もしかして…と思い、そちらへ向かって行くと案の定、探し人と骸が闘っていた。
「あーうー、どうしよう」
さっきまでの怒りは、どこかへ行ってしまい、代わりに「困った」ことになってしまった。
うーうーと綱吉が唸っている間にも争いは激化し、建物はどんどん壊れていく。
その時!!
あろう事か、骸が壊した建物の残骸に躓いてバランスを崩した。
「あっ!!」
その隙を雲雀が逃すはずがない。すぐさまトンファーを振りかぶって、素早く振り落とした。
しかし、骸も諦めない。その攻撃を紙一重で躱し、反撃に移ろうとした。
が、生憎足場がかなり悪かった(悪くした)せいで、体制を立て直せず、そのまま倒れた。
目の前にいた、雲雀を巻き込んで…
沢田綱吉脳内変換マシーン起動!!
その出来事は、綱吉には“骸が雲雀を押し倒した”としか見えていなかった。
プッツーーン
…今度こそ完全に、綱吉の中の何かがキレました。
「…恭弥さんは、
俺のものだーーーーーーー!!!!!」
超モードに素早く切り替わった綱吉は、まず未だ倒れたままの骸をギッタギタのバッキバキにして、それでも足りずに心が乱れるままに、暴れまくった。
……。
「それで、一体どうしたと言うんだい?」
ほとぼりが冷めて、雲雀が綱吉に聞いた。
「だって、恭弥さんが…」
ポツリポツリと綱吉が事情を話すと、
「馬鹿だね、君は」
「えっ?」
「僕が、君以外の人間を選ぶ訳がないじゃない」
「それって、もしかして…」
カンチガイ。ようやくその事に気が付いた綱吉。
それと同時に、自分がやらかした事にとてつもなく恥ずかしくなった。
真っ赤になった綱吉を見て、クスッと笑って雲雀は言った。
「まったく、いつまでたっても君はドジなままなんだね」
それを聞いてムーと頬を膨らませた綱吉を見て、またクスリと笑って、
「でも、久しぶりに会うからね。これから美味しい物でも食べに行こうか」
それを聞いた綱吉は、顔を輝かせて「はいっ」と嬉しそうに返事をした。
「俺、新しくできた美味しいって評判の店 知ってるんですよー」「へぇー」と楽しそうな声がどんどん遠ざかって行く。
その頃、ほぼ全壊した建物の周辺ではー
「一体何だったんだ…」
力なく呟くマフィアで一杯だったらしい。
ちなみに、奇跡的に無事だった執務室で一心不乱に書類と闘っていた獄寺は、リボーンが帰って来て事情を尋ねるまで、外の様子に気付かなかったとか。
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