その他SS

□君を想う
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灰色ねずみちゃん
初めて会ったとき、僕はそう言ったね。

だって君、灰色なんてとても似合わなかったんだもの。
ま、だからこそ目を引いたんだけれども。

次に合ったときは、君だって気付かなかったよ。
当然だろ?君は老婆の姿だったんだもの。
でも、もしかして。って、何度も思った。
それは僕の希望も入っていたんだろうけどね。
でも、老婆の時の君は、灰色のドレスを着てびくびくしていたときの面影も無かったから、確信にいたる前に、いつも『もしかして』で終わっていた。
でも君の妹のレティからきみのことを聞いたとき、確信したよ。
君があの時の娘さんだってね。


今から思えば、レティを追い掛けていたのは、君に似ていたからかもしれない。それくらい、君は僕にとって印象深かったんだよ?


老婆のときの君は、大胆なほどの態度で僕の中に入って来たね。
だから僕は君の前では、本当の僕をさらけ出していたんだ。

そう、だから君が、僕が目を付けていた娘さんだって気付いても、格好つけることが出来なかったんだ。情けないことにね。

だから君には振り向いてもらえないと思ってた。
でも君は僕を好きになった!
本当の僕を知っても、僕に恋心を抱いてくれた!

嬉しかった。

言葉には出していなかったけど、僕にはわかった。
それが分かったとき、絶対離さないと決めた。
そのために君の家族を呼んで留まらせようとしたのに、君は出て行った。荒れ地の魔女の火の悪魔が化けたアンゴリアンを助けるために。
流石に呆れたよ。
君の人の良さに。
折角アンゴリアンを嫌いになるように、僕がアンゴリアンに気があるそぶりをして嫉妬させたのに。

そして呆れたと同時に焦りもした。
荒れ地の魔女の所に行って無事に済むなんて冗談だってありえない!
いつも、二時間使う身なりなどのセットもせず、焦って君を助けに行ったよ。

城に戻ったら戻ったで、僕はすぐに気絶してしまったし。
でも気付いたら、心臓が戻っていた。
そして、君も元の姿に戻っていた。
火の悪魔を倒して、全てが一件落着になった。

でも、僕にはまだやらなければ……いや、言わなければならないことがあった。そう、ソフィーに。

君が僕のことを好きだってのは分かってる。
でも、それでも不安だったんだ。
何かの拍子にいなくなってしまいそうで。
だから、僕のところに繋ぎ止めるために言わなきゃならない。
「僕と君は末永く一緒にいるべきじゃない?」
勇気を出して言ったかいがあったよ。
だからこそ、君は今僕の元にいる。

絶対に離してやらない。

ずっと僕の元に居てもらう。

だから、想う。

君が離れていかないようにと。

君が僕を想うようにと。

だから僕は、ずっと、君を想う――。



END

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