その他SS
□愚かしき指導者
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ピンポーン
マンションの若月の部屋の呼び鈴が鳴る。
(桜川か?)
今日は日曜。
特に予定が無い限り、ヒトミは若月の部屋にくる。
扉を開けると、案の定そこには桜川ヒトミがいた。
「あ、おはようございます。先生」
その微笑みからも、少なからず色気が滲み出ている。
当然、それも若月が教えた。
「おお、待ってたぜ。入れよ」
「お邪魔します」と言って部屋に入るヒトミ。
靴を揃える体制や仕種もチェックする。
(問題無い。ちゃんと身についているみたいだな)
確認してから、いつものようにもてなしの茶を入れに行く。
その間ヒトミは座って待っている。
だが、少しおかしい。
いつもならこうして待っている間も、何かしら話し掛けて来るのだが……。
不思議に思いながらも茶を持っていくと、またしてもおかしい。
そわそわして、何やら落ち着かない様子だ。
「どうした?なんか相談したいことでもあんのか?」
茶をテーブルに置きながら聞いてみる。
「えっと…はい。ちょっと困ったことがあって……」
そう言って上目使いでこちらを見てくる桜川。
そのツボをついた仕種に、心臓が跳ね上がるが、必死に押し隠した。