その他SS

□愚かしき指導者
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「何だよ。言ってみな?」
促すと、少し迷ったそぶりを見せ、ぽつりと話し出した。

「あの、実はまた告白されたんですけど……」
桜川のその一言に、若月は表情が固まった。
一年前、ダイエットに成功してからというもの、ヒトミは学年問わずもてた。
元々の容姿がいいため、当然といえば当然のことだ。

「返事は卒業式のときにって言われたんですけど……」
若月の表情が固まったのも気付かず、話を続ける桜ヒトミ。
「すればいいじゃねーか」
出来る限り普通に言おうとしたが、幾分か刺が入ってしまった。
それに気付いてか気付かないでか、ヒトミは話を続けた。

「それが……三人もなんです」
「……あ?」
「だから、卒業式に返事をくれっていう人が三人いるんです」
本当に困ったという顔で繰り返す。
「……そりゃ……何とも……」
何と言っていいか分からず、曖昧な言葉しか出てこない。

「どうしよう、先生」
(どうしようと言われても……)
「別々じゃあだめなのか?」
「はい、三人とも式と片付けが終わったあとすぐにって。しかも場所が屋上と体育館と図書室ってバラバラなんです」
少し涙目になってきたヒトミ。
そんな姿も可愛いと思ってしまう若月。
(あーやばいな……もしかしなくてもオレ様、本気か?)
そう思いつつも、口からは冷静な言葉を放った。
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