NARUTO

□殲滅作戦 #01
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俺は、既に任務内容の書かれた紙面を受け取り、それを燃やしたはずだった。だから、もうこんな時間には、任務に就くべく里を発っているのが当たり前だ。それが何故か再び火影様直々に任務に就く前に執務室に来るよう言われ、こうしてまだ家の明かりの灯る中を火影邸へと向かい、走っているのである。いい加減、火影様の気まぐれには付き合いきれない。






「…白銀(しろがね)、お召しにより参上いたしました」
「おお!来たか!…風花(かざはな)、連れが来たぞ」






火影様の机の後の窓に気配を消した影が現れる。全身黒を纏った姿は確実に暗部任務に赴く者の装束で、小柄な影が付けている面には、見覚えがあった。確か今日は非番だったはずだ。






「ということでな、風花とツーマンで行け。火影命令だ」
「…了解」






火影の命令は絶対だ。しかし、風花と共に出向くような任務ではない。人手の不足する里に、態々暗部のトップを二人も割く必要は無いはずだ。何が魂胆なのか測りかねていると、風花はさっさと部屋を出て行こうとする。慌ててその後を追う俺は少し滑稽だったかもしれない。一回りも違う子供に振り回される、俺。






「…ちょっと待ちなさいよ、風花、……ナルト」
「…任務中に呼ぶなと言ってるだろう」






刺々しい空気に自分が話しかけても無駄なことを悟る。これでは風花、つまりナルトが呼ばれて俺とツーマンセルを組ませられた理由を尋ねることは出来そうもない。諦めに溜め息を吐くも、そもそもこの子供はそういうさっぱりした性格であったと思い至る。特別、このような状況は珍しくもないのだ。






「…作戦内容は知ってる?」
「…知ってる」






忍としての腕は申し分ない。だが、人間としては無機質で淡白すぎる。生き方を知らない子供は会話の方法も知らないのか、あまり会話をしたがらない。弾まない会話に一人虚しくなるのだが、どうにもならない。






今回の任務は抜け忍の一掃だ。厄介なことに他国の大名の屋敷に十数人匿まわれているらしい。上忍クラスの忍が多いと聞くが、恐らく大した手間はかからないものだ。陽動も要らないし、術も大して要らない、体術を主とする任務。見張りの数も少なく、割と潜入はしやすいというのが情報隊の情報だ。






「…手、上げたら行くよ」
「…ああ、分かってる」






見張りが外に面した廊下を去ってすぐに、左手を上げる。それを合図に俺達の任務は始まった。血に塗れた忍の務めが。






終わってしまえば楽なもので、ほんの数分で終わってしまった。忍刀に付着した血を拭い、子供の方を見る。子供は、いつもなら絶対に外すことのない仮面を外して、こちらをじっと見ていた。血の付いた手の甲ででも拭ったのだろうか、顔に血を拭ったような跡がある。






「…どうかした?」






ナルトは無言だった。じっと見ていた目を逸らして何かを思案している。おもむろに懐からクナイを出したかと思うと、それを肌へと突き立て、真っ直ぐに引いた。






「ッ何してんの、お前は!」
「…任務中に俺が負傷した。だから俺は帰還が遅れた」






だから、お前も帰れないだろ?と言って鮮やかに笑ってみせる子供の腕に付けた傷は、もう無い。先程の言葉の意味する所が分からず俺は内心首を傾げる。別にここに滞在し続ける意味も無い。だからといって帰還を急く訳でもなく、とりあえず言葉に頷きを返した。それが分かったのだろう、ナルトは言った。






「…今日はお前の誕生日だろ。あと二時間くらいしか無ェけど休むなり何なり好きにしろよ。…って、ばっちゃんが」






今日は、俺の誕生日らしい。最早そんなものは一年の中に埋もれてしまう程度だったが、この年になってまで祝われるとは思わなかった。…素直に、嬉しい。そう思った俺は、こちらに背を向けた子供を抱き締めた。暴れることもなく、腕に抱いた子供は大人しい。そして俺は、寄せた耳元に囁いた。






「…ありがとう、ナルト」
「…どうも」






いつもの素っ気ない返事も、真っ赤に染まった耳を見つけてしまえば、酷く愛しいものだった。




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