NARUTO

□Ice Queen
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「…俺の為に死ねよ?」
「…それが貴女の望みとあらば」


仄暗い、まともな陽光すら射し込むことの無い空間に声が響く。
女の少し高めの声音に続き、男の低音が静かに空気を揺らす。
未だ幼さを残す声に似付かわしくない会話は、絶対的な響きを持ってして互いを束縛した。


「…俺の役目は貴女をお護りすることです。貴女の為に死ねるのならば本望ですよ。…女王陛下」
「…盲目的だな。あまりにも、盲目的だ。お前はいつまで俺を美しいと思っていられるのか」


男の声は玲瓏な響きを持ち、狂気の快楽を含ませて女の鼓膜を震わす。
宛ら甘美な毒の様に体躯を蝕むそれは、確かに中枢神経を犯した。
あまりに盲目的だと女はそれを否定するが、痺れた吐息が互いに近すぎる頬を濡らした。
吐く吐息は限りなく白く、果てなく甘みを孕んだ。
自嘲の笑みを薄らと浮かべる女は暗く湿った部屋で一際大きく揺らぐ。
まるで消えゆく真白な蝋燭のか細い炎の様に。


「……明日にはもう俺は俺のものでは無いというのにな」


吐き捨てる様な女の言葉に男は僅かに反応を示すが、言葉無く女を見詰める。
女も言葉無く唯一出入りすることが出来る微かな光の見える豪奢で悪趣味な古びた扉を遠い瞳で眺め、自嘲の笑みを口許が表した。
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