NARUTO

□麻薬的殺戮中毒
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子供は闇を一人走っていた。
黒いマントで身を隠し、紅い血を滴らせながらそれでも。
見た所齢は未だ十にも及ばぬか、という所だったが、この殺伐とした忍の世界ではそれもまた、よくある事だった。



金の髪を靡かせながら子供は懸命に森を駆け抜け、逃げていた。
それこそこの闇よりも深く暗い、静寂を纏った闇から。



「さぁて、何処へ逃げた?」



暗闇の中から低い男の声が嗤いと共に降ってくる。
子供はその声を聞いた瞬間に顔を強張らせ、走るスピードを上げた。
このままでは捕まってしまうと焦り、縺れる足は子供の意思に反して、止まろうとする。



子供は木の葉隠れの里の忍だった。
その里に入れば、子供はこの恐怖から一時逃れることが出来るのだ。
しかし子供は、自分が任務の後よく男に追われ、痛めつけられることを里長に話していなかった。
多忙な里長に迷惑を掛けたくない、というのも確かに理由の内の一つではあったが、大きな理由は他にあった。



追ってくる男は、子供を傷付けながら、死ぬ程の傷は与えなかった。
毎度追いかけながらクナイで服を裂き、肌を裂き、血に染まることを楽しむかの様に子供を傷付けた。
そして子供はそれが自分の受けた任務が暗殺や殲滅など人間を殺す物であればあるほどエスカレートする事を知っていた。



白銀の影が子供の頭上を覆い、月を完全に隠した。



「…見つけた。ちゃんと逃げなきゃダメじゃない」



白銀の男は緋と藍の色違いの瞳を獣の様に光らせ、子供の蒼い瞳を射抜いた。
口布をずらすその長く骨ばった指は既に血に濡れており、子供の頬に触れた場所から、じわりと侵食してゆく冷たくも激しい熱を生んだ。
流れる血は張り詰めた緊張を融かし、精神を異常なまでに高揚させ、人間を狂わせる。
麻薬の様に徐々にその体躯を蝕み、犯すのだ。
まるで中毒の様だと笑った男は妖しく笑み、抵抗もせず黙っている子供を見下した。
暗殺任務によって高揚した精神を持て余す男は子供の肌を酷く愛し気になぞる。
ピクリと僅かな反応を返した子供の体躯を這い回る指を手近な所に落としていたクナイに伸ばし、四代目火影の施した封印式の描かれた滑らかな腹部へと突き刺した。



「所詮お前は、先生の代わりでしかないんだ」



―先生ではない、違う人間は、いらない。



ゴフリと鮮血を吐き出した子供に跨がり、粘着質な音を立て、周囲を紅く染め上げながら満たされぬ快楽の背を求め、追う男は、両の瞳に血の涙を流す。



愛し気に伸ばされた子供の細い手は、男に届くこと無く、地上へと落ちた。
 

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