V
□ほら、だって
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【ほら、だって】
怖い。
初めてそう思ったのは多分、ずっとずっと幼い頃。
ガイは時々酷く怖くなる。
怒ったり喚いたりする訳じゃない。
でも、凄く冷たい目をするのだ。
全部を捨てたみたいな、全部を壊そうとしているみたいな澱んで冷めた目。
他の人は知らない。
だって、俺といる時だけだから。
でも、俺はガイが大好きなんだ。
偶に怖くなるけど、普段のガイは優しいし暖かい。
だから多分、あの怖いガイは偽者なんだ。
ちょっとの間だけ、他の人がガイの身体を使ってるんだ。
まだ上手く言葉が話せない頃から、俺はずっとそう思っている。
だってほら、普段のあいつはあまりにも暖かいから。