V

□寝言と君
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「ん…ロ、イド、くん」
「ははっ」
むにゃむにゃと大凡成人した男がする事がないであろう寝言の中に、幸せそうな呟きが混じる。
閉め切ったカーテンは遮光性ではないのだが、未だ光を写さない。暗くて時計は見えないが、きっと夜明けまでまだ時間があるのだろう。
ロイドは隣で眠るゼロスの白い頬に指を滑らせた。目元にかかっていた紅い髪を梳いて後ろに流してやればふわりと薫る石鹸の匂い。旅を始めてからは全員同じ物を使っているはずなのに、ゼロスが纏えばそれは高貴なものになる。
「寝言で俺の名前、呼ぶとか」
手入れは欠かしていないだろうに気候のせいか少しかさついた唇に触れると、んん、と唸ってあじと噛まれた。
「どんだけ俺のこと好きなんだよ」
あじあじと甘噛みを続けるゼロスの口から指を取り返して、ロイドはそれで自分の唇に触れた。昨日は何度も直接したというのに、こんな間接キス一つでも嬉しい。
ゼロスに触れたい。ゼロスが触れたものからゼロスの感触を奪い返したい。それが自分の指であっても、ロイドは更にゼロスを感じたいと思うのだ。
「な、俺もお前のこと大好きだよ」
それこそ夢を寝言に出したらゼロスに引かれてしまうくらい、とロイドは一人可笑しくなって笑った。



「ゼロス好きだ〜…愛してるー…」
「ぷっ。ロイド君、寝言で告白って」
俺さまも、お前のこと大好きだよ。



end.
シリアスか甘ということでしたので、偶には甘を。これ…甘、かな?
ナチュラルに床を共にしてます。

しん様、リクエストありがとうございました。
 

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