V

□恋と家族と
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「じぇー、ぼう」
掠れた声が二人きりの空間に落ちる。眠っているモーゼスと起きているジェイの空間で、しかし言葉を発したのはモーゼスだった。
隣に寝転んだ彼の口元を汚す涎を見つめて小さく笑ったジェイは、はだけて浅黒く細い身体を晒すシーツを引き上げた。
「んん」
むずがって身じろぐ寝癖頭を梳くように撫でるとへにゃりと情けなく崩れる隻眼の柔らかさは、起きている時とまったく違うイメージを持たせる。
(この笑顔を一人占めしたい)
人一倍独占欲が強いという自覚はあったがそれ程執着するものもなかったため、こんなに相手を縛りつけたいという衝動を感じたのは初めてだ。

昼間、セネルとモーゼスが仲良さげに小突きあいをしていた時にも。
ノーマと彼がお菓子の取り合いをして騒いでいた時にも。
先程彼とその相棒が一緒にウィルの家の風呂に入っていた時にも。

ざわざわと湧き上がる黒い感情を押し隠すことも出来ずにクナイを投げつけた。
それでも今隣でモーゼスが安心したように寝ているのは、彼のいう「家族だから」なのか。ジェイは苦笑してモーゼスの眼帯にかかった長い前髪をかきあげた。
「家族でも良いんですけどね…。僕にだけ特別な立場をくださいよ」
耳に吐息と言葉を吹き込むと、シーツにくるまった身体が微かに揺れた。

(貴方を独占したい。僕だけのものになってほしい。家族以外の立ち位置がほしい。僕だけを、特別だと思って)

きゅうと締め付ける心と同じだけの強さで隣の身体を抱き締めると、唸った彼の腕がすっぽりとジェイを包み込んだ。



end.
次のチャバモゼがシリアスなので、ちょっと甘にしてみました。
モーゼス喋らなくてごめんなさい!雰囲気で感じてください…!

かるま様にのみフリーです。
リクエストありがとうございました!
 

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