V

□paralysis
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かくんと膝が折れて、金色の短い髪を靡かせながらガイの身体が地面に吸い寄せられる。
「…あ、れ」
世界がどんどん低くなり前を歩いている仲間達の足元を目にした次の瞬間、獣道の凹凸が多い地面に身体を打ちつけた。
「ガイ!?」
驚いたように振り返った仲間の内、真っ先に駆けつけたルークに「大丈夫だ」と伝えようとしたガイは、身体がまったく言うことを聞かず、先程思わず声を出した喉ですら痺れていることに気づいた。
指先がほんの少しも動かないのだから、先の声は自分で思うほど大きくなかったのかもしれない。
「ガイ!大丈夫ですの!?」
「はわわ、大丈夫?」
声をかけられても曖昧に苦笑うのが精一杯で、ルークに上半身を抱き上げられて初めて「だいじょうぶだから」と言えた。それすら掠れて聞き取りにくいものだった為、ナタリア達には届かなかったのだが。
「ティアもナタリアもTPが残り少ないですからねぇ。遠慮したくなるのは分かりますが」
にこりと笑顔を浮かべたジェイドがルークの腕の中にいるガイを見下ろした。
「毒を放っておくのは頂けません。お仕置きが必要ですかね?」
「ヒッ…!」
引きつったガイの喉は情けない悲鳴だけ通行を許可してしまい、ガイは
恐怖と羞恥で涙目になる。
そんな彼を宥める掌が額に触れて、同時に掌の持ち主はジェイドを睨みつけた。
「ジェイド、ガイを怖がらせるなよ。大体こいつは俺等の為を思って我慢してたんだぞ」
「おや、怒られてしまいました」
てへ、と自分の頭に手を当てた三十五歳をアニス以外が気味悪そうな表情で見つめてもジェイドに堪えた様子はない。
その間に荷物からパナシーアボトルを探し出したらしいアニスが「気持ち悪いですよぅ、たーいさ」と笑顔で言いながらルークにボトルを差し出した。
「アニスは酷い子ですね〜」
「キャハ!そんなことないですよぅ」
「ありがとうアニス」
掛け合いを楽しむ二人を横目に見ながら早口に礼を述べると、ルークはきゅぽんとボトルの蓋をとった。
ガイの後頭部を支えて飲みやすい体勢にしてから「飲めるか?」と尋ねる。
小さく口を開けたガイは「飲める」と主張しているのだろうが、力の入らない身体で開いた精一杯の口はとても狭く、ボトルの中身が溢れてしまいそうだった。
「仕方ねえな」
ルークの口に運ばれるボトルをぼんやりと見上げて「あれ、俺にくれるんじゃなかったっけ」と思っていたガイは、パナシーアボトルの中身を含んだその口が自分に向
かって来ても反応出来なかった。
半開きのままになっているガイの唇を割り触れた舌を押さえられて、流れ込む生温い液体。
「…っふ、ん……ぁ」
苦いそれを吐き出そうと舌で押すとそれを蹂躙するルークの舌が無理矢理喉に液体を押し込んだ。
「んぐ…ふぁ、にが…い……っ!」
「…ん、お。飲んだか?」
「…っん…バカ、なに……!」
口端からつぅと流れた一筋の液体をグローブで拭ったガイは、「大丈夫か?」と笑うルークの後ろに視線をやってからやっちまったと嘆いた。
にまにま笑う悪魔二人はこの際いつものことだから仕方ないと諦めよう。しかしその横で上品に口に手をあてつつも目を爛々と輝かせている二人の少女を見た時、ガイは先程とは別の理由で身体が動かなくなるのを感じた。
「おーい、ガイー?」
「ルーク、暫くそっとしておいてあげましょう」



end.
リクエストからずれました!
ルークはみんなのにまにまにまったく気づかず無意識にガイを羞恥に陥れます。

翼たきび様にのみフリーです。
リクエストありがとうございました!
 

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