V

□大きくなあれ
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俺はね、ロイド君。
君が俺じゃない人の隣で笑っているのも嫌なくらい、心が狭い奴なんだよ。
君が俺じゃない人を選んだ事にこんなにも苦しくなってしまう程、弱い奴なんだ。
君が俺を信じていないかもしれないと気付いただけでもうこの世界も自分もどうなっても良いと思ってしまうくらい。

「…バカヤロー…!」
「ほんっとに、大馬鹿野郎だよ、俺さまは」

ほら、こんな大馬鹿、早く殺しちゃえよ。
簡単だよ?
お前がいつも磨いているその剣で俺をぶすりと刺せば良い。
多分俺はとても幸せな気持ちでこの呪われた生命を捨て去れるだろう。

「ロイド君」

優しく優しく囁いて、ロイド君の剣を弾いた。
甲高い音が鳴って、なんだかそれが合図みたいにもう片方の剣を俺に向けて真っ直ぐと突き立ててくる。
ああ、駄目駄目。それじゃあすぐに死ねない。
俺さま苦しいの嫌なんだけどな。

「…がっ……!!」
やっぱりロイド君が刺したのは急所じゃなくて、天使の生命力を持った俺さまには致命傷に成り得なかった。
だからちょっとだけ邪魔者排除のお手伝い。
剣を掴むロイド君の手は震えて力が入っていなかったから簡単に主導権を奪って。
少しだけ抜いて、もう一度刺しなおした。
「ぐっ…ぁ!…」
「!?っゼロス!何でっ…!」
ああ、勿体無いなぁ。
男前がそんなに歪んだ顔をするもんじゃないよ。
俺さまの最期に相応しい、同情と憐れみに満ちた神子を侮蔑する眼差しじゃないと。

「…ロ…ィド…」
ぐしゃぐしゃに涙で濡れた顔を見て、思い切り笑ってやった。
「やっぱ俺、お前の事嫌いだわ」

小さな小さないつでも間引き出来そうなその存在が。
不安定で嫌になる。
だから、だから。
「早くでっかくなれよ」
この世界を守れる様に。
俺の様な馬鹿者を簡単に排除出来る様に。

なあ。
俺の、世界の、希望の光。



end.
早く大きくなって老いてそれで。
(本文何を書きたかったか忘れた)
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