V

□ほら、だって
3ページ/5ページ




そこに、いたのは。
「…優しい、ガイ、だ」
優しいガイが、寝ている。
いや、優しいかどうかなんて本当は分からない。
だって俺が怖いと思うのはいつもガイの冷たく光る青い目で、その他のパーツはいつもと何ら変わらないから。
すうすうと幼い顔で眠るガイがもし怖いガイだとしても、俺には分からない。
それが酷くもどかしく、許せなかった。
ガイの事は全部分かってると思ったのに。
怖いガイを知っているのが自分だけなのが悲しいのと同時に少しだけ嬉しかったのに。
そんなならいっその事、ガイなんて死んじゃえば良いのにと思った。


音を立てない様に部屋に滑り込み、ぎしりとスプリングを呻らせてガイに馬乗りになった。
まだ起きない。大丈夫。
俺は自分が何をしようとしているのかなんて分からなくて、ただ、ガイが悪いんだと思った。
全部を俺に見せてくれないガイが悪いんだって。
首に回した両手に、力をこめた。
ひゅっとガイの喉が鳴って、少しだけ苦しそうに眉が寄せられた。
ああ、考えてみればこんな顔も見るの初めてだなんて。
馬鹿げてる。こんなこと。
俺はゆっくりと指を外した。
ガイの肌に吸い付いて離れたがらない指を一本ずつ丁寧に引き剥がして、それでも馬乗りのままガイの眉間から皺が消えていくのを見つめていた。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ