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『華と酔っ払い』

「ガイラルディアは美人だなぁぁ〜」
「何言ってんれすかぁ陛下ぁ。ガイはあたしの奥さんなんらから美人に決まってますよぅ」
両脇から絡んで来る酔っ払いを見て、ガイは盛大な溜息を吐いた。
よりにもよって男相手に美人だの奥さんだのと宣っている二人は、一升の酒瓶を抱えてラッパ飲み。
「…花見なんだから俺じゃなくて花を見てください」
「いやいや、ガイラルディアは華だからなっ!これは立派な華見だ!」
「はうあ!陛下うまい事言いますね〜」
何故青空の下で男を眺めて楽しめるのかとガイは呆れ顔だが、上機嫌な酔っ払いは気づかない。
「…陛下、お酒は程々にしてください。ジェイドに怒られますよ。アニスも。未成年だろう?」
そう言ってアニスの前にあった酒瓶を取り上げると、据わっていた彼女の目が余計に据わった。
半目でガイを見上げてにや〜、と笑う様はどう見ても良い事を考えてはいない。
「な、なに…」
「ぺたぺたしちゃうもんねーっ!」
がばあ!
「わあぁやめろアニス!酔っ払い!」
「やれやれ〜!」
「陛下も助けてくださいっ何だよこの質の悪い絡み酒組っ!」
後ろからピオニーに押さえつけられ、正面からぺたぺたの餌食とされたガイは本気で泣きながら暴れている。
にも関わらず周りにいる他のメンバーは助ける素振りもない。
寧ろピオニーと同じくやれやれとはやし立てるのだ。
つまり、全員酔っている。
「うわぁぁ!誰か助け…っ!ちょっ…ジェイド!助けろよっ」
「いや〜、酔ったみたいですねぇ。無理です」
「絶対嘘だろこの鬼畜眼鏡!!」
さらりと言ってのけたジェイドにガイの叫びは届かない。
その間にガイを仰向けに押し倒した二人は上からがっちりと彼を押さえ込み、にやりと笑った。
「肌すべすべ〜」
「ひいぃぃ!触らないでくれっ!」
「ガイラルディアは綺麗な肌してるなぁ。噛み痕つけて良いか?」
「どこの親父ですかっ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながらガイは何時もなら助けてくれる筈のティアやナタリア、そしてルークを振り返った。
しかし。
「すかーっ」
「ルーク寝るなぁ!起きてくれっ!助け…っ!」
酒瓶を抱えて寝入っている彼の助けは最後まで入る事はなかった。


「ルークのアホっ!」
「う…でかい声出さないでくれよ…。頭いてえ…」
「自業自得だ酔っ払いぃ!」
翌日。
二日酔いになったルークに八つ当たりしながらもやはり甲斐甲斐しく看病をしてしまうガイであった。



end.
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