V

□オトナコドモ
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屋敷の離れに荒い息と熱とが充満して、ガイは息苦しさに喘いだ。
「はっ…ルー…!」
ぐいっと口元を拭ってずり上がって来たルークはガイの紅潮した顔を覗き込んでにんまりと笑う。それからまるで悪戯でもしているかの様な気軽さでれろりと涙で濡れた頬を舐めた。
「な、ガイ。俺ガキ?」
瞳を覗くと虚ろになったそれがルークを捉えて、じわりと潤む。綺麗な青が水分を含んで霞んでいくのを見て慌てるが、思わず頭を撫でるととうとう新たな涙が頬に支流を作ってしまった。
「ガ…ガイ?」
心配げに宥めるルークを見上げたガイはしゃくりあげながら諦めた様にぽつりと呟いた。

「ただのガキならどれだけ良かったか」

組み敷かれる自分を情けなく思い、しかし視線の先の笑顔に全部誤魔化される自分が悪いのか、と溜息を吐いた。



end.
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