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□一緒に
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本当は、一緒に飛びたいけど。
俺にはお前みたいなでかい翼はねえからさ。
地べた這い回っても、追いつけないなら…いっそ。
振り向かずに、飛んでって。



【一緒に】



「カズ?」
びくりと肩が跳ねたと思う。
まさか追い掛けて来てるとは思わなかったのに。
すぐ近く、後ろからイッキの声がした。
「カズってばよぉ…」
近づいて来る声に焦る。
それなのに、動かない足。

(…来るなよっ)

心の中で拒絶してみても無駄。
強い力で肩を捕まれた。

「おい、カズ!」
返事をしない事にだろうけど、少し怒った様な声音でイッキが俺の肩を引いた。
「…何?」
小さく返事を返しただけで、鼻につんとキた。
涙が出そうで、でもイッキに見られたくなくて、くっと息を飲み込んで我慢する。

「何、じゃねえよ。お前こそナニ?人の顔見るなり逃げてよ」
どうやらイッキは本気で怒っているみたいだ。
何時も笑いかけてくれる目に睨まれているというのが悲しくて、再び瞳が熱くなった。
「…逃げてないよ、別に」
「逃げてンだろ」
「逃げてないっ」
「……はぁ」
イッキが呆れた様な溜息を吐く。
それから俺の隣に大の字に寝ころんだ。
此処は屋上。
何時もなら俺もイッキと一緒に寝転んで話したりするんだけど、今は。
目を逸らす。
仕方なく、上に広がる蒼を見上げた。

広く、蒼い、空。
…イッキが大好きなそれ。

ヤバい。
(ナニ空に嫉妬してんだよ、俺)
考えて、悲しくなって。
ニット帽をぎゅ、と下に引っ張った。

「カズ」
「……なに?」
「ニット、脱げよ」
「…嫌」
伸ばされた手から庇う様にきゅ、とニットを掴んだ。
それにムカついたイッキは何が何でもとろうと、がばっと起き上がって掴み掛かって来やがる。

「離せっ」
「ニット脱げってば」
「いやだ!!」

ばたばたと暴れている内に、背中は温く熱せられたコンクリートについていた。
それでもまだ無駄な抵抗を続ける。

だって、見られたくないから。
イッキにはこんな情けない姿とか、泣き顔とか、見られたくない。
既に見られたりしてるんだけど。
「嫌だっ、ヤだって言ってんだろ!!」
もう声が半泣きだったりするんだけど。
だって、嫌じゃんか。
俺ばっか、イッキを好きみたいで。
おいてって欲しくないなんて。
嫌じゃん。
一人ぐずぐず泣いて。
やっぱり俺は弱いんだって、再確認しちまうから。


 
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