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□離してしまった掌は
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「俺、男だし?」
残念ながら男と絡む趣味ねえのよ、と。
樹はさも当然の意見を述べた。
確かに、と思う。
樹は女の子にモテるから、男に恋慕の想いなんて向けられても迷惑以外の何物でもないだろう。
「っ…だよな。……ごめん」
その答えを聞いた葛馬は、一瞬、ほんの一瞬だけ傷ついた表情をして。
笑った。
何時もみたいにへらりと。
ただ。
「…んじゃ。…俺帰るわ」
葛馬は教室を飛び出した。
夕方の教室。
呆然としたままの樹だけが残されたそこで、ぽつりと呟いた。
「あいつ…泣いて…?」
夕焼けに照らされた雫が、見えた気がした。
【放してしまった掌は】