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□会いたい逢いたいぎゅってしたい
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【会いたい逢いたいぎゅってしたい】
イキカズ



「…イッキぃ」
会いたい、逢いたい、ぎゅってしたい。
何時もみたいに抱きついて、頭を撫でられて。イッキの太陽みたいな匂いに包まれて安心したいのに。
「バカ…」
イッキはやっぱり女の子の方が好きなんだろうな、とか。リンゴの事好きなんだろうな、とか。
考えれば考える程、悪い結末ばかりが浮かぶ。

今日も、昨日も、一昨日も、その前も。
イッキはリンゴと一緒に帰っちゃって。
俺が「今日も一緒に帰れないの?」って聞いたら、困った顔をして「悪ぃな」だって。
困るんなら、言ってくれれば良いのに。
もう別れようぜって。言ってくれれば良いのに。
それすらしてくれないイッキは、意地悪を通り越して酷いと思う。

「…イッキなんか嫌いだ」

小さく小さく呟いて、机に突っ伏す。
夕方の教室には俺しか居なくて、外から聞こえる部活してる奴らの声すら小さくて。余計に淋しくなる。
このまま寝たら見回りに来る折原あたりに怒られるかなぁ、って思ったけど、それでも良いやって目を閉じた。

…イッキの莫迦。大嫌いだ…。

***********

「カズ、カーズー」
「……ん…」
煩い。誰だよ。
ゆっくり目を開ける。
ぼんやり霞んで見える教室の中は赤くて、あれからあんまり時間がたっていないんだろうなって思った。
それから、聞こえる声。
…イッキの声?
夢?
イッキがいる訳ないんだから。

「カーズ!!」
「わわっ!?」
頭をぐりぐりされて、勢い良く起き上がった。
「…イッ、キ?」
「おう」
何でいるんだよ、リンゴと帰ったんじゃないのかよ、って睨んだら、思った事がバレたらしい。
「帰ってねえよ」
「え…?」
「だから帰ってねえって。最近リンゴと学校出てからまた戻って来てたんだよ」
「…何で?」
俺が首を傾げたら、イッキがにやりと悪い顔で笑った。
「カズが、妬くかなぁと」
…取り敢えず、その性能の悪い頭を殴って。
「莫迦」って言ったのと、涙が出るのが同時だった。
ムカつくのが三分の一くらいと、後は安心したから。

そしたらイッキは困った顔で頬を掻いてから、「ごめんな?」って。
ぎゅうって抱き締められて、凄く安心した。

…悔しいけど、やっぱ好き。



end.
 

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