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□さよなら三角また来て四角
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紅い涙を流す墓標を残して…。
【さよなら三角また来て四角】
『さよなら、紅麗サン…』
ジョーカーの声が、聞こえた気がした。
それで、理解した。
今この状況、最近のあいつの態度。
まるで、死ぬ事を悟っていた様な。
「……ジョーカー…」
握り締めた拳から血が流れている事にすら気づかなくて。
ただただ奥歯を噛み締めた。
(…何で、お前が…)
***********
「紅麗さ〜ん!」
麗に入ってすぐ、敬語でなくタメ口で話させてくれと言われた。
それで良いと頷くと、突き出た犬歯を見せてにっと笑った。
その表情を少し愛しいと思ったのは事実。自分の本心。
「く〜れ〜い〜さんっ!!」
「何だ、ジョーカー」
「なんやつれん反応やなぁ」
そう言って、にんまりと笑う。
きっと彼からは仮面で見えないだろうが、その下の素顔(ホンシン)は何故か温かい気持ちになって。
「…なんだ?ジョーカー」
「あんな、くれいさん…」
「…」
「大っ好きや」
その言葉に、とてつもない幸せと、不安を感じて。
***********
「…あの時、既に知っていたのか?」
だとしたら、最後の最期まで。
本当に質の悪い男だ。
「ジョーカー」
くすり。
小さく小さく笑みが零れた。
本当に、質の悪い。
そして私は、本当に救い様のない。
「どうやら君を失って初めて気づいた様だ…」
あの時「大好き」だと言った彼は、彼の屈託無い笑顔は、優しい声は。
もう此処にはない。
「ジョーカー」
やけに高い天井を見上げた。
「愛している」
ずっと、私が消えるまで。
この思いは絶えない。
『また、会えたらええなぁ』
彼の声が、宙(ソラ)に上る。
end.
愛してたじゃなく愛してる。