TALES

□親友兼使用人
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お前は俺の大切な親友で。
命かけて守らないといけない御主人様で。
でも、殺してしまいたい程に憎い、復讐の相手。
でもな、でも………
俺の中には、それ以外の感情もあるんだ。
何でも無い奴の為に命かけられる程、出来た人間じゃないしな。



【親友兼使用人】



「はぁ―…」
ガイは深く息を吐いた。

とある街、とある宿。
その一室で自分に割り当てられたベッドに腰掛けて、ガイは思考の海へと沈んでいた。
原因は、分かっている。
自分の親友であり主人のルーク・フォン・ファブレ。

(………どうしたもんかねぇ)

声に出さず、考える。
そのまま後ろに倒れ込んでベッドのスプリングを唸らせると、ぎゅっと瞳を瞑った。

好き
好き
大好きだ
…愛してる

溢れ出しそうな想いをそれでもガイは今まで表に出す事無く、誰に気づかれる事無く、隠し通して来た。
しかし此処に来てそれが難しくなってきたのだ。
ルークに気づかれてはいないかとヒヤヒヤする時すらある。
それに今日も、この部屋は一人部屋では無い。
ルークと…好きな奴と、二人部屋。

きぃ…

考え事をしていると、小さな音をたてて扉が開いた。
ガイは突然の事に驚き、飛び起きた。
しかし入って来たのが眼鏡をかけた男でルークでは無かった事を疑問に思いそいつに話し掛ける。

「ジェイド、ルークは?」
「ルークなら急に『部屋をかわってくれ』と言い出しましたので。すみませんが今日は私が貴方と同室です」

何時もの食えない笑顔でそう言われる。
しかしガイにはその言葉に納得出来ない部分があって。

『部屋を変わってくれ』?

それは只単に一人になりたかったから?
それとも、自分と同じ部屋が嫌だから…?
きっと後者だろうと思う。
自分のこの気持ちが彼にばれてしまったのならば、避けられるのは当たり前だ。
何と言っても、気持ちが悪い。

ガイは何とか「そっか」と返したが、笑顔は作れなかったかもしれない。
顔の筋肉が引きつってそれどころでは無い。
だから、少し一人になる時間が欲しかった。

「悪い、旦那。ちょっと俺、散歩して来る」

邪魔になるかとも思ったが、一応腰紐に刀を通して部屋を後にした。
ジェイドはその様子を口端上げて見ているだけだった。


 
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