五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)
□04-ごじょーさとるとJK
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「……オマエ、なにもの?」
「アミはアミだよ」
「ゴジョウサトルは俺」
男の子がそんな意味不明な事を言うから、アミは意味不明になった。
「はっ? どうゆうこと?」
「だから、ゴジョウサトルは俺。で、俺になんの用?」
「ハァッ?」
やっぱり、まったく意味が分からなかったので、アミは頭の中がグチャグチャになる。
とりあえず、眼鏡のミドリちゃんを頭の上にカチューシャみたいにして外して、裸眼で目の前にいるちびっ子を見た。
髪の毛は確かに白い。目はカラコン嵌めてるみたいにキラキラしてるから、可笑しいと言えなくもない。
でも子供だからデカくないし、そもそも気持ち悪いバケモノたちとは似ても似つかない。普通の人間にしか見えないんだけど。
「いや、ごじょーさとる違いだよ。だって君、バケモノじゃないし」
アミがそう言ったら、めっちゃ呆れた顔をする男の子。
「なに言ってんの? オマエ」
これアミ、馬鹿にされてるな。イラつくんだけど――ムカってしたけど、アミは大人だからこんな事で怒ったりしないんだ。アミってば、やっさしー!
綺麗な目の男の子はアミのやさしさに気づかないまま、ジッとこちらを見てくる。
「バケモノのゴジョウサトルには、何の用だったわけ?」
「いや、特に用はないよ。とってもめちゃくちゃ強いらしいから、どんなバケモノか見てみようと思っただけ」
「やっぱり俺の事じゃん」
「だから、違うってば…」
しつこいなぁー…――自称ごじょーさとる、こと、プチごじょーさとるの事を、アミは少しだけウザいな、と思っちゃった。
「ごめんね。アミ忙しいから、もう行くよ。バイバイ」
おこちゃまの話に付き合ってられなくて、アミはとっととココから離れることにする。
「待てよ」
歩き出そうとしたアミの手を男の子が掴んだ。
「ッ!!」
アミの手に触れた瞬間、慌てて離れていくプチごじょーさとる。
人の事をばっちい扱いして失礼だなー。ちゃんとハンドクリームで毎日きちんとケアしてるんだからね!
「オマエ、なんなの? ぐにゃぐにゃして、ジュツシキがはっきり見えねーんだけど」
よく分からない事を言われて、アミはまた首を捻る。
「じゅちゅしき?」
「ジュツシキだよ」
「なにそれ」
またもや意味不明なんだけど。ジュツシキってなに?
「オマエどこの田舎から出てきたんだよ」
「アミ、都会の女だから。なめないでくれる?」
渋谷の裏から、新宿の端。山手線の大体はここ半年で遊びつくしてるんだからね! えっへん!――なんて心の中でドヤってても仕方がないと、アミは男の子に声をかける。
「てか、逆にそっちはアミに何か用なの? アミの後ろずっとついてきてたでしょ」
実は男の子が後ろからついて来てたのには気づいてたんだよね。
アミみたいな可愛いお姉さんに手を振られてキュンとでもしちゃったのかな? アミってば罪づくりな女!えへッ!......って思って放置してたけど、さっきからの態度からして違うみたい。
謎すぎるプチごじょーさとるは、やっぱりアミを見つめたまま口を開いた。
「オマエ、ジュブツ持ってるだろ。それも高位クラスの」
「じゅぶちゅ?」
またまた謎単語が飛び出た。いい加減、ちゃんとアミにも通じる言葉で話して欲しい。
「ジュブツ。…呪われてるモノだよ」
「ハァ?」
意味が分からなすぎて、意味不明をとおりこして呆れちゃう。
「そんなの持ってる訳ないじゃん」
なんでいきなり呪われてるとか出てくるわけ? 普通に怖いんだけど ――アミがドン引きしてると、男の子は視線を少し下に逸らした。
「そのウサギの中に入ってるヤツだよ」
アミのウサタンポシェットを見つめる男の子。
あまりにもジッと見つめてくるので、ウサタンポシェットに入ってるモノを順番に思い出していく。
――記憶消去薬、お助けアイテムの指輪、普通の薬、ボイスレコーダー付のボールペン、カッターナイフ。……あとは…
「……ん?」
なんとなく、1つ思い当たるのがあった。
「もしかして、バケモノのエサのこと?」
“バケモノのえさ”って言うのは、気持ち悪い指のこと。
バケモノ退治でバケモノを引きつけたり“もしもの時”に使ったりしてる道具。
そのまま出しておくとバケモノがメチャクチャ寄ってきて大変な事になるから、アミが管理を任されてる。てか、アミしか管理が出来る人が施設にいないんだよね。
呪われてるモノかと言われたらハテナだけど、バケモノをおびき寄せる力はあるから特別なモノではあるかもしれない。
「もしもアミが、その、じゅぶつ? 持ってたらどーすんの?」
男の子は視線をアミに戻した。
「理由によっては回収する」
「え、無理! これアミの生命線だもん!!」
ガチで困るので慌ててウサタンポシェットを抱え込んだ。
「いーい? これ、オモチャじゃないんだからね? 子供が持ってたら危ないんだよ!?」
「こっちのセリフだよ。一般人が扱うオモチャじゃないんだよ。……一歩間違えたら死ぬぞ、オマエ」
いやいや、こっちのセリフだから。と、アミはげんなりした。
「もう本当、意味不明だし! いーかげんにして! もうアミ行くから! じゃあね!! バイバイ!」
別れを告げたのに、それでも謎の少年、プチごじょーさとるはアミを追ってきた。
走って逃げたかったんだけど、アミ、10mくらいしか走れないから無理なんだよね。
走った後に死ぬほど辛くなるの。てか、マジで死にかけるし。そうなった方が色々ヤバい。
だから歩く速度でしか逃げれなくて、男の子から逃げきることが出来なかった。
――あー! ウッザい!!
子供じゃなかったら完璧ストーカーなんだけど! 警察にでも行こっかな?
――てゆーか、なんでバケモノのエサのこと分かったの?
アミは頭を悩ませた。
――あれ、そういえばこの子普通にバケモノ見えてたよね。えッ、もしかして......
歩くのを止めてアミは真相を確かめるために男の子に振り返る。
「ねえ、それカラコン?」
「裸眼だよ」
「バケモノ退治した事ある?」
「……バツジョの事?」
トーゼン、あるに決まってんじゃん。と男の子は言った。
「ふーん。君もヒーローなんだ」
施設の子以外ではじめて見た。
「ヒーロー?」
なんだそれ、と言葉を漏らす男の子。
アミのいた所じゃバケモノを倒せる子の事をヒーローっていう。
その中でアミは“選ばれし子供たち”というグループにいた。今は皆死んじゃったからもうアミ1人になったけど。
ヒーローじゃない子たちから凄いねって言われるけど、ヒーローってアホなんだよ。死ぬまでバケモノと戦わされるからバカみたいなの。ウケるよね。
こんな小さい子がヒーローなんて可哀想だな…、とプチごじょーさとるを見て思ったけどアミだって気づいた時から戦ってたから同じだった。
それでも子供がバケモノと戦う苦労を知っている先輩のアミとしては同情してしまう。
――うーん、仕方がないなぁー…
アミは大人な思考になってプチストーカーに笑いかける。
「ねえ、アミお腹空いた。ハンバーガー食べに行かない?」
アミってば、本当、優しーよね!
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