五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)
□00-終わりの旅立ち
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死んだら忘れられちゃうなんて、そんなの当たり前のことだよね。
※
スマホにイヤホンをさして、イヤホンを耳に装着しながら電話をかける。
「もしもし〜? 伊地知パパぁ? はぁい、アミだよぉ〜」
ワンルームのせっまーい部屋に置かれたベッドの上。アミは電話をしながらも次の準備のためテキパキと準備する。
「うーん、あのねぇ、どうしたじゃなくってさ。アミ、怒ってんの分かる〜?」
“施設長”の“ジジイ”が用意したクソダサい真っ黒なゴルフバック。そこに必要なものを詰め終わってチャックを閉める。――うん、完璧! アミってばやっぱり出来る子!
「なんでアミが怒ってるか分かんないでしょ? 伊地知パパ空気読めないもんねぇ。仕方ないからぁ、やさしーアミが教えてあげる。……アミの友達にさぁ、手ぇ、出したでしょ〜?」
最終点検で冷蔵庫やキッチンに食べ物が残ってないか指差して確認。
「誰って、記憶にないのぉ? ウケる〜! 」
特に何もないな。って思ってたら、流しの下にアメリカ生まれの棒付アメーーチュッパチャップスが大量に見つかった。アミの貴重な栄養源だ。やった! 持ってこう!!
「……ミウコだよ。ミウコ。覚えあるでしょ? マジありえないんだけど」
発見した棒付アメを専用のポーチに入れて、ゴルフバックにしまいなおす。
「ご飯食べただけって、そう言ってアミが信じると思ってる? あーあ、伊地知パパがそーゆう人だって思わなかったなぁ。アミ、ショックだわ〜」
引っ越してから半年くらいしかたってない、ワンルームの最終点検。
元々、物は全然おいてなかったからすぐに点検は終わった。
まあ、友達にヤリ部屋にされてから、実はアミ、この家に殆ど帰ってきてないんだけどね。
「ハァ? 何それ。アミの誕生日プレゼント知りたかったからミウコと会ったの?? そんなのアミに直接で聞けばいいだけじゃん。……しかもアミ、サプライズ嫌いなの知ってるよね??」
家にいる事の少なかったアミは基本的に“伊地知パパ”の家にいる事が多かった。
「伊地知パパとミウコのどっち信じるかって? そんなのミウコに決まってるじゃん。伊地知パパ胡散臭いし〜」
そしてアミは今、その伊地知パパと会話をしている。
「……ってわけで、伊地知パパ。アミ、伊地知パパとのパパ活、やめるから」
理由は勿論、別れ話のためだ。
「アミさ、伊地知パパの事、好きだったけど。そういう事されると気持ち悪いんだよねー。……いや、ヤッテないって言われてもアミ分かんないし。不信感しかないよ、アミ。いまね。分かってる?」
洗面所へ向かって鏡の前に立つ。鏡にはイケてる15歳の女子高生が映ってた。
やっぱり、アミ、今日も可愛いなぁ!って、自画自賛する。
――あ、ちょっと前髪変だ! 直さなきゃ!!
前髪を直す時に自分の爪が視界に入って、あぁ…、って少しテンションが下がった。
昨日までは長さもあって赤のぷっくりジェルネイルでめっちゃ可愛かったアミの爪。
だけど今はベースとトップコートのマニュキアだけで短くなっちゃった。地味すぎて萎える。
この後の用事で邪魔になっちゃうから全部とったんだよねー……
「ハッ? 何言ってんの? 会って話すのとか、だるいから無理だし」
前髪を整えて、自分の身だしなみを確認する。
ワイシャツにリボンタイ、白のニットカーディガン、チェックスカートのなんちゃって制服。
アミの高校、制服無いから、その辺で買ったので制服っぽくしてるんだー。
ちなみに靴下はルーズソックスね。アミ、アザが出来やすいから防御力をあげなくちゃなの。
肩からかけてる、アミのトレードマーク。ウサギのぬいぐるみ型ポシェット。――通称ウサタンポシェットの位置を調整する。うん、バッチリ決まってる! 激カワなアミの完成!
「いや、無理無理。もうアミ今から寝るし」
しっかり見た目を整えて、アミは再びベッドに腰掛けた。これで出かける準備はOK!
「てかね、アミ引っ越すんだ。海外に」
染めた髪先をなんとなくいじる。トゥルトゥルのキューティクルが光ってる。
「アメリカとか、ニュージーランドとか、韓国とか、まあその辺にね、引っ越すの。……まだ具体的には決まってないんだけど」
伊地知パパとはアミが高校生になってからの付き合いだった。
「だからね、アミ、お金持ちで顔が良くて性格のいい、高身長なナイスガイ見つけて、グローバルな彼氏作るから。もう伊地知パパ必要ないの」
大人の遊びとか、大人な世界とか教えてくれて、キスが上手いパパだった。
「えー! 捨てないでー、とか女々しすぎてウケるんだけど!」
お金払いもよくて、カッコいい、イケメンだって女子友達からも評判は良かった。
「ウザーい。キモーい。ダサすぎー! じゃあね。バイバーイ」
アミはそれだけ言って通話を切った。
流れ作業でそのまま伊地知パパをブロックすると、電話番号も着信拒否にした。
別にアミは伊地知パパを嫌いになった訳じゃない。
ミウコと伊地知パパが会ったとかヤったとか、ぶっちゃけどうでもいいし。
じゃあなんで、別れ話しないといけないかっていうと――アミ、今日が終わったら死ぬ予定なんだよね。
ごじょーさとるって、バケモノを殺すために作戦に参加しないと行けなくて。
それ終わったら殺される予定なんだ。
アミって律儀だからさ、人間関係とか綺麗にしときたいタイプなのね。
だから、みんなにバイバイをしないといけない。
友達には海外へ引っ越しするって別れの挨拶をしたから、これでアミが音信不通になっても、大丈夫でしょ。
施設の子で仲良かったナナには泣かれちゃったけど、最後には分かってくれたし。
伊地知パパは、なんか心配してきそうだったから、こうしてハッキリお別れしてあげた。
いやー、アミってばやさしー! めっちゃいい女すぎるんだけど!
「伊地知パパ。今までありがとうね。なんだかんだ楽しかったよ…」
お別れを済ました元パパにお礼を言う。
――よし! じゃ、行こっか!
アミは気持ちを切り替えて、ベッドから立ち上がる。
スマホにイヤホンを巻き付けて、カーディガンのポケットにしまうと、クソダサいゴルフバックを背負って玄関へ行く。
こげ茶色のローファーを履いて、ドアノブを押し開けたら外に“施設”の大人が待っていた。
別にアミ逃げないんだから見張ってる必要もないのになー、と少し嫌な気持ちになる。
玄関にある家中の電気を全部消せるスイッチを押して、中が暗くなったのを確認すると、アミは半年しかいなかったお家にバイバイした。
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