五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)
□02-時渡ったJK
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再び世界が明るくなると、段々光を失っていくマホー陣の中にアミはいた。
パキンッ――金属が砕ける音がして、自分の指を見るとお助けアイテムの指輪が壊れてた。アミは手を振って金属の欠片を地面に落とす。
「使者が来た! 御前に報告しろ!!」
マホー陣の周りで大人たちがガヤガヤしてる。特にアミに近寄ったり何かしてくる気配はなさそう。
あたりをサッと見渡したけど、さっきいた所との違いが分からなくて、本当に過去に来れたのか分かんなかった。
ただ、カーテンの隙間から光が差し込んで、今が朝か昼ってのは分かる。
実はアミは寝てただけで、朝になったのを過去送りって言ってるだけのドッキリでしたー!!……とかないかなー?――ないよねー…、と悲しくなりつつ、カーディガンにしまってたスマホをチェックする。
「ゲッ、何これ…!」
日にちや時間が「--年--月--日--時--分」になってた。――バグってるじゃん。ヤバッ……。
「凄いな!五体満足じゃないか!」
聞くだけで嫌になる声。そっちの方を向くとクソジジイがいた。
さっき会ったジジイと見た目は変わらなくて、着ている服が違うだけ。
ジジイは早足にマホー陣の傍まで近づくと、アミを上から下まで舐めまわすように見てきた。
「今までで一番マトモな外見だな! 君、名前は言えたりするか!? んん?」
「アミはアミだよ。くそジジイ」
「受け答えまで出来るのか!? 凄いじゃないか!! さすが私だな!!」
興奮気味のジジイを見て、やっぱりさっきのジジイとは違う人みたいだと思った。
「ねえ、ここって本当に過去なの?」
「君は西暦何年何月何日から来たんだ?」
「2017年10月1日の日曜日から……」
耳にタコかイカでも出来るんじゃないかと思うくらい、聞かされた実行日を答える。
「ほう、なるほど……アミ、だったかい? 安心なさい、今日は1999年9月9日。君にとっては18年前という事になる」
「1999年、18年前とか…」
アミが生まれる前じゃん。ていうか2000年より前の時代とか想像できなくてマジでウケるんだけど。
この子を僕の部屋まで連れてこい、と施設の大人にジジイが命令する。
アミは言われるままジジイの部屋へと移動させられた。
※
豪華な家具が並んで、大きな机と大きなソファが並べられた部屋。
その部屋でジジイと向かい合って座らされた。
姿勢を正すのも馬鹿らしいから、アミはだらけきった態度でソファにもたれかかる。
「聞きたい事は尽きないが、とりあえず、必要な用件だけ先に済まそうか。アミ、例の物を寄越しなさい」
「……」
ゴルフバックから指示書を出すと、無言で机の上に放り投げた。
ジジイは特に気にした様子もなく封筒を手に取ると、用意していたナイフで封を開ける。
けっこー長い間――数時間くらい?
ずっっっっっとジジイが指示書を読んでたので、アミは暇で暇で仕方なかった。
眠いのとお腹空いたのと、疲れたので、ウサタンポシェットを抱いて半分寝落ちする。
「おい、起きなさい!」
うるさいなー、って思いながらアミは顔をあげた。
「ハァ? なに?」
「過去へ来るときに私に何か聞かされたり、指示された事はあるかい?」
「指示書を読んだジジイのいう事を聞けってさ」
「なるほど」
ジジイはジロジロとアミの事を見てきてニヤニヤしてた。…ウザきもーい。
「いや、やはり素晴らしいな。身体的部位欠損が一切なく、知能指数も問題ない。なのに能力はレアクラスで強力。こんな個体を将来作れるようになるとは……」
「ねえ、アミ、この時代で何したらいいの?」
ぶつぶつ何か言い始めたので、ウザったくて仕方なくて、話を進めるために聞いてみた。
ぶつぶつを止めたジジイは無表情になる。
「君のしたいようにすればいい」
「はぁ?」
「それが未来の僕からの指示だ」
トントン、と指示書を指で叩くジジイ。
何、その指示。意味不明なんだけど。――てっきり、ごじょーさとるを殺すために何かやらされるかと思ってたから、少し拍子抜けする。
「じゃあ、アミが何もしたくなかったら何もしなくていいってこと?」
「極論そういう事だ」
「……」
何もしなくてもいいって、本当に何もしなくていいの? 分っかんないなぁ...。
んー、ただ、何もしなくていいなら、アミが過去に来る必要もないから、やっぱり何か動いた方がいい気がするんだよねぇ。……ジジイの能力を考えた時に。たぶんだけど。
「ねえ、今って何時?」
「朝の8時だ」
「アミがここに来た時の時間って分かる?」
「大体5時頃だね」
確か、タイムスリップは24時間だって説明を受けた。だから明日の5時頃まではこっちにいないと行けない。
「ごじょーさとるって、今どこにいるか分かる?」
「ああ。最近は渋谷あたりに出没しているそうだ」
「えっ、渋谷!?」
渋谷と言えばアミの庭じゃん! 18年前の渋谷って、どんな感じなんだろう? ふつーに気になるんだけど!
――渋谷…行きたいなぁ。……よし!
「アミ、渋谷いってくんね」
18年前のアミの庭が気になり過ぎて、アミは渋谷へ行くことを決めた。
ジジイの了承もとれたので、今の時代に合わせた持ち物に変更してもらう。
持ってるモノを全部ジジイに見せると、スマホと財布を没収された。
代わりに渡されたの物を見て、アミはちょっと不機嫌になる。
「なにこれオモチャじゃん。馬鹿にしてんの?」
そう、ジジイが持ってきたのは、2つ折り電話のオモチャと、ニセ札だった。
「この時代の携帯電話と、紙幣だよ」
......オモチャじゃなかった。
携帯電話、ガラケーっていうんだっけ?、を手に取って開くと画質が低くすぎて笑っちゃった。
お札は一万円は諭吉のままだけど、なんていうか暗い雰囲気だった。
そんでもって千円札と五千円札には知らないオジサンがいた。――誰この人たち!? 爆笑なんだけど!!
アミが色々と感激してると、今度はピッてする定期券を没収された。
「え、ちょっと待って、それなかったらどうやって電車乗るの?」
「君は切符の買い方を知らないのかい?」
「いちいち切符買うわけ? ダルくない? ヤバすぎなんだけど」
「ICカード乗車券が導入されるのは2001年。2年後だ。これはこの時代ではオーバーテクノロジーだよ」
「えぇー…」
わりと不便そうな1999年にアミはちょっとゲンナリしはじめた。――アミ、この時代でやってけるかな??
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