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□短編
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『・・うーん』

「起きたのか?」

『・・・・・・・・』

「寝たばかりか・・・」

昼ごろに家に戻った
リビングを見渡し、見慣れた姿を探せば
ソファの横で丸くなって眠っている彼女を見つけた

顔にかかる髪をどけ寝顔を眺めれば、少し声を上げた
何が不服なのか眉間に皺がより
すぐにまた、あどけない寝顔に戻った
起きないところを見ると、寝たばかりなのだろう

「また君は、僕が読みかけの本に手を付けたのか・・・」

それは、僕に早く帰って来いと言っているのだろうか
なんて、考えるが彼女に限ってそれはないだろう






誰かが触れた気がして目が覚めたが誰もいない
寝てからそれほど時間が経っていないのか、眠気が全く取れていない
もう一度眠ろうかと思ったが、ふいに先ほどまで読んでいた続きが気になり
目を覚ますために、洗面所へと向かった

『・・・・・・・・』

「・・・・・・・・ただいま」

『・・・おかえり』

「相変わらず驚かないな、新零は」

『そうね。殿方の上半身で顔を赤くするような乙女じゃないの』

「・・・・・」

『?!』

少しからかってみらくなり
彼女に近づいて壁に追い込んだ
もちろん、逃げ出せないように両手をつき腰を曲げた

「これでも、だめか」

『・・・なんだか無駄のない身体ね』

「それは、君もだろう?」

『・・・・・胸なんて邪魔なだけだそうよ』

「僕は、何とも言っていないんだけどな」

『・・・・・・・・!』

「やはり、少し背が伸びたな」

『成長期かしらね・・・濡れるからくっつかないでよ』

風呂上りの濡れた髪をかきあげ、額を新零にくっつければ
迷惑だと言わんばかりに眉間に皺ができる

「・・・それで、君は何をしに?」

『顔を洗いに来ただけよ・・・別に覗きに来たわけじゃないわ』

「それで、前髪をピンで止めていたのか。後ろ髪、持っていてあげるから早くしなよ」

『・・・・ありがとう』

髪が長いせいで、髪ゴム等で止まらないため
結ぶ必要があるときはリボンで結んでいる
最初は、お菓子の包装の紐などで結んでいたりするものだから
適当に見繕って渡せば
素直にお礼を言って受け取った





『・・・・・・・』

「今、君がどんな顔をしているのか、思い浮かぶよ」

『私が読んでいたのよ』

「先に読みかけたのは僕だ」

『・・・・・・・・』

寝る前まで新零が読んでいた本を手にソファに座れば
見なくとも、不機嫌さが伝わってきた

「君は、後で読みなよ。まだ読んでいない本がたくさんあるはずだ」

『・・・いいわ、別に。一度読んだところだけど、読み返すから』

そう言って、隣に腰掛け本を覗き込んだ

「それは、僕にページをめくれと?」

『貴方が読んでいるのを見ているだけよ。すぐに私が読んだところまでいくだろうし一石二鳥』

それから、しばらくして眠気に耐えられなくなったのか
僕の方にもたれかかってきた

「眠いのなら、寝ていれば良かったというのに」

頭の位置を少しずらし
枕替わりに足を貸すことにした

最近、懐いてくれたようにも感じる



この時間に、和んでしまう自分を笑いたくなる

それでも、彼女だけでは自分の欲は満たされないのだ



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