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□短編
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「・・・・・・・・」

やや湿った足音が目の前を過ぎる
視線を上げればお風呂上りの新零

もう何度も見た
だから、どうということもないが
本当に男に対して危機感がないんだなと実感する
あの環境にいたのなら仕方がないか

バスタオルを巻いただけの姿で、うろつき
挙句本を読み始める時もある

長い髪はドライヤーを使うことなく
自然乾燥

「早く服を着なよ」

『・・・・暑い』

「・・・・・・・適当に何か着ればいい」

『・・・・・』

「髪も乾かさないと風邪を引く」

『平気よ。いつもこうだったけれど、風邪は引かなかったわ』

新零の中の常識は世間の常識でなく
彼女の中で勝手に成立してしまっている

仕方なく彼女の服を取りに行こうとして
自分は一体何をしているんだと思い、思わず動作を止めた

子育てか?
取引相手に知られたら、笑われそうだ

「・・・おいで。頭部だけ乾かすから」

『・・・・・・ありがとう?』


自分は一体何をしているんだろう

ドライヤーを彼女の髪に当てながら
自問自答を繰り返した

白い猫っ毛が指の間を通っていく
この小さな頭に膨大な知識が入っているのだと思うと不思議だ


『・・・・・・・・・』

「・・・・新零?」

『・・・・・・・・・、なに?』

「もう、終わる」

『・・・ん』

眠たいのか、声が少しこもった

「寝るなら、服を着てからにしなよ」

『・・・わかった、ありがとう・・・』

「・・・・・・いい子だ」



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