PP

□番外
1ページ/11ページ

番外5





ソファに転がった新零と目があった


『とりっくおあとりーと』

「・・・・・・・」

いつも眠そうな彼女にしては、やや明るい表情に
どうしたのかと思えば
お決まりの言葉が聞こえた
ややイントネーションはおかしいが
まぁ、許容範囲

だが、しかし、時間の流れというもの残酷だな

「新零、残念なお知らせだ」

『?』

「ハロウィンなんてものは、とっくの昔になくなった」

『・・・・・・・・・・』

少なからず衝撃を受けているのか、目が見開かれる

「宗教がらみの行事は、もう祝ったりしないんだ」

『・・・・・・・・』

「バレンタインなんていうのも昔あったけど、もうやらないな」

『・・・・・・・・・・』

「残念だったね」

『とりっくおあとりーと』

「だから」

『聖護に通じるなら、成り立つでしょう?』

「・・・・・・・」

『お菓子がないなら、いたずらね』

「たとえば?」

『・・・そうね、聖護の端末から、グソンの連絡先を消すとか』

「陰湿だな。それは、悪戯ではなく、嫌がらせだ」

『なら、なぁに。包丁でも突き立てればいいのかしら?』

「その方がいいな」

『・・・それで、お菓子は?』

「何の話しかな?」

『・・・その後ろ手に隠してるそれは、何だって言うのよ』

「なんだ、つまらないな。気づいていたのか」

『あれの匂いがしたわ』

「まったく、犬並みの嗅覚だな・・・・それでは、新零」

『?』

「Trick or Treat?」

『・・・・持ってるわけないでしょう?』

「なら、悪戯だ」

『・・・・・・・・・楽しそうな顔しないでくれるかしら』

「いや、何をしようかと思ってね」

『何もしなくていいわ・・・・・Trick or Treat?』

「いい発音だ」

ソファに手をついて転がったまま見上げている新零の髪を梳くって弄る
何をしたら、面白い反応が見えるだろうか

「新零、起きて」

『・・・・・・?』

新零が起きたのを確認して、後ろ髪を掴んだ

『?!』

「大人しくしなよ」

『どこの殺人鬼よ』

「それを僕に言うのか?」

『自覚があるのね・・・って、ちょっと!!』

「ほら、じっとしてないと首に刃が当たる」

『それは、悪戯じゃなくて嫌がらせだわ!』

「お菓子を持ってない、新零が悪い」

『当然だって言って・・・』

剃刀でシャッシャッと髪をそいでいく
前々から、長くて邪魔そうだと思っていたのだ
ここに来たばかりのころは、嫌がったので
それほど切らなかったが、もういいだろう



『Treat!!』

「いいよ、短いのもかわいい」

『・・・・・・』

前方の横髪は、長めに残し、
後ろ髪は首が隠れるくらい

なかなかうまく切れたのだが、本人は気に入らないのか
とても機嫌が悪そうだ
本当に包丁でも持ちだしそうな目に、笑いかけてやる

「Happy Halloween!新零」














“新零・・・?”

“連絡が遅くなった”

“・・・ダンナですか?端末壊れたんです?”

“いや、新零が連絡先を消してしまってね”

“・・・は?”

“やってくれるよ。少し悪戯をしただけだったんだが”

“やり返されたんですか。彼女に何したんです?”

“髪の毛を切っただけだよ”

“それまたどうして?”

“新零がお菓子を持っていなかったから、悪戯をした”

“・・・・・・・あぁ昔の”

“シュークリームを渡しても機嫌が治らなくてね、困ったものだ”

“・・・・・・・”

“どうかしたか?”

“ダンナも相当大人気ないですね”

“・・・・・・・・”



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ