PandoraHearts

□C
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「起きろ!俺はお前の目覚まし時計じゃねーんだよ」
『・・・・・・すぅ』
「・・・・・・」
「エリオット、睨んでもニーナは起きないよ。」
「何で、俺らがこいつを部屋まで起こしにこなければならないんだ!!」
「仕方ないよ、ちょうど先生にあって頼まれたんだから」
「だからって、ここは女子寮だぞ!なら、女子に頼めばいいだろうがっ」
「先生も、ナイトレイとアラントの仲について知っているんじゃないかな?」
「関係ねぇだろ!」
エリオットはここが女子寮であり、ニーナの部屋にくるまで昼休みの間に部屋に戻る女生徒たちに不思議がられながら見られたことが気に入らないのだ。
「別に、僕たちはニーナに何かしにきたわけじゃないんだから」
「けどっ・・!!・・・・?!」
エリオットが部屋の隅に転がっているものに目をやる。
よく見ればカーテンには血がついており、下には黒く固まった血痕がある。
その先に立てかけられていた刀は血で濡れており、早急に手入れをしなければ痛んでしまうだろう。

「あれって・・」
「まさかとかは思ったけどよ、やっぱりアラント家っていうのもそういう仕事請け負ってたってことか。」
普通の人間なら起こさないだろうが、エリオットは迷わずにニーナを起こしにかかる。
「起きろっ、もう昼だぞ!ふざけるなっ授業サボってまで仕事してんじゃねーよ!!」
『・・・・・・・・・・・・っ・・・・・!!はっ』
急に目を開けたニーナが足を振り上げエリオットの頭へ蹴りを入れようとする
「エリオット!!」
「・・っく」
すぐに体制を整えたニーナが銃をこちらに向け威嚇する。
『・・・・誰っ・・っはぁはぁ・・』
傷を負った獣のようなニーナにこちらも動くことができない
「エリオット、エリオット・ナイトレイ。俺を忘れたとは言わせねーぞ。」
『エリオット・・・・・・・・あぁ、そっかぁ・・・・エリオットとリーオだね。はぁっ』
「大丈夫?ニーナ。」
『・・・っごめん、大丈夫だよ』
気まずそうに、銃を枕元に戻しベッドに腰掛息を整える。
「怪我ねーのか?」
『えっ、何で?』
「・・・・・・」
『あぁ、あれか・・・・ってやばい!!』
「あ?」
『刀、傷んじゃう!!』
「そんなことしてねーで、昼からの授業どうすんだよ!」
『休む。』
「ふざけんな!!何のために俺らがここに来たと思ってやがんだ!」
『そういえば何でここにいるのさ・・』
「・・・っいい加減にしやがれ!せっかく起こしに来てやったっていうのに御礼の一つぐらい言えよな、しかも、授業に出ないだぁ?何考えて」
『エリオット・・・いくら家柄上関係が大事だからってこれ以上私に関わらないで。ほっといてくれていいよ。』
「んだよそれ!!・・・・せっかく人が」
『余計なお世話よ・・・・・出てって。起こしに来てくれてありがとう・・けど、次はこなくていいよ。』
一度もこちらを見ることなく、刀の手入れを始めるニーナにエリオットは怒りを覚える。
「あーあー、誰が来るか!!勝手にしろ」
床に置いた荷物を乱暴に持ち上げ部屋を出て行くエリオットについてリーオも部屋を去る。
「明日の授業は、ちゃんと来てね」
『・・・・善処します。』


「あーあーあー、むかつくやつだな。くっそ」
「ニーナってさぁ、一匹狼のイメージだよね。本のヒロインもさぁ、誰かと関わろうとしないとろとかあったよね。あれってさぁ、自分以外の人間を事件に巻き込みたくなかったからだったよね。」
「だからって、あいつがそうとは限らねぇだろうが」
「そうだけど・・・・でも、そうかもしれないよ。」
リーオの一言に足を止める。
「リーオ、何か知ってるのか?」
「えっ?」
「あいつのこと。」
「そうだね、でもうん。アラントの家は人数が少ないし情報も少ないからね・・確かアラント家当主には一人息子がいて」
「一人息子?なら、あいつは・・」
「拾われ子って話だよ。」
「そうは見えないけどな」
「本当にエリオット、知らなかったんだね。」
「まぁな、アラントって名前は知ってるけど俺はあまり関わってないからな。」
「そっか・・あの身のこなしは戦いなれしてるよね」
「・・・・・・」
一連の動きを見て自分もそう思った・・・戦闘慣れしているのだ、銃を向けたとき俺が名乗らなければ撃たれていたかもしれないのだ。
「・・・・関わるなって言ってんだ。関わらなきゃいいだろ。」
「・・・そうだね。」

授業時間が近づき人気のない女子寮の廊下を歩いていった。





怖かった。目を開けたときに誰かがいた・・殺されるかと思った。
このままでは食われてしまう・・まだ、死にたくない。まだ・・・死にたくないよ。
そう思った時にはすでに体は動いていた。
刀の手入れをしながら先ほどのことを思い出す。
人が怖い。過去の記憶と重なり自分が食べられると勝手に思い込んでしまう。

アヴィスでの記憶はそれだけ色濃く残っているのだ、戻ってきたばかりの頃はもっと酷かったのだから今思えばかわいいものだ。
『良かった、それほど傷んでない・・。リランっ』
「ニーナ、彼等にちゃんと謝ったほうがいいのではないですか?」
『男には気をつけろって言ってたくせに』
「彼等は安全そうです。」
『どこがよ』
「そのような姿のニーナに手を出しませんでしたから。」
・・・・キャミソールタイプの中に着るワンピース一枚。しかも白。
『リランっ、そういうことはもっと早く言って』
「あらあら、照れちゃって。かわいいわねニーナは。」
『うるさい。』
「授業はちゃんと出ないと・・・おばあさ様もそう言っていたでしょう」
『そうだけど・・。』
「しばらく仕事は休みなさい。ニーナが持たないわ」
『そんなことないって!』
「あるわよ、私がこんなにぼやけてるのよ・・・ニーナ。無理はダメよ」
『・・・・でも、私が行かないと多くの人が傷つくのよ』
「だからってニーナが傷つくのを見ていられない人達だっているのよ。」
『・・・・。』
「とりあえず、残りの2日間はちゃんと授業を受けること、仕事も受けない。授業中も寝ない。いい?」
『・・・・』
「わかりました?」
『はい。』
「そうと決まれば早く刀を手入れして今日は寝なさいね」
『うん。』
リランは、私の姉。
チェインとなっていても私の姉なのだ。
面倒見のよい素敵な姉

私は知らないうちに契約していた。
アヴィスを独りで彷徨っていたとき突然現れたのだ。
真っ白の大きな狼だった・・・最初は怖くてすぐに逃げ出したのだが自分に擦り寄ってくるのを見て少しずつ受け入れるようになった。
姉であるという話を聞いたのはそれからしばらくしてからのこと、人の姿をとったリランに驚いたものの彼女の話を聞き納得するしかなかった。
5歳の私には、リランしかいなかった。
何もない空間に独りぼっちでいた自分にとって、安心できるのはリランの隣だけだった。



「おやすみ。ニーナ」
「ニーナは寝てしまっているのですね・・・」
「セバスさん」
「依頼の仕事がいくつか」
「2日間は断ってください。今のニーナには休息が必要です。」
「やっと、休む気になったのですか」
「さっき、なんとかですけどね」
「良かった。それでは、こちらで手配しておきますので。」
「お願いします。」
実体化をといたリランは誰からも見えなくなった。
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