遙か1

□散華★
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友雅が行方不明になったと騒ぎ始めてから、今日まで、たった十日ほどなのに。
何もかもが新鮮に感じられて、まるで、初めて身体を重ねた夜のよう。




「こちらへ、おいで。久方ぶりに、愛しい君の顔をじっくり見たいよ」
「・・・うん」



素直に、帳台の入り口から身体を滑り込ませた途端、起き上がっていた友雅に引き寄せられてしまった。


「ぅわっ!」
「もっと傍においで、私の愛しい人。恥じらう仕草も、堪らなくなりそうだよ」

いきなり、耳元で美声を最大限に使って囁かれ、思わず、びくりと跳ね上がってしまった。


「ちょっ、友雅・・・」
「身体を重ねるときには、あんなにも素直に私を求めてくれるのに。素面で、私が君を求めるのは、いけないことかい?」
「そぅじゃ、ねぇけど・・・」



向い合わせで抱き合う、と言うよりも、体勢を崩したまま、友雅にすがり付く形になってしまった。

そして、そのまま、友雅から噛みつくような口付けを与えられれば、温もりの残る褥に押し倒されてしまう。



「いきなりかよ・・・」
「どれだけ、君を味わっていないと思っているの」
「・・・身体、もう、いいのかょ?」
「愚問だね・・・。愛しい君が、自ら見舞いに来てくれたのだから、主が歓迎しなくては、ね」



言葉を交わしながらも、友雅は、いつものように、慣れた手つきで天真の衣を、一枚ずつ剥ぎ取っていく。
友雅の悪い癖で、一度にすべて剥ぎ取ってしまうのではなく、最初は、紐を緩めて寛げるだけ。


それでも、確実に響く衣擦れの音にさえ、身体の奥深くを燻られてしまう。


静養中の友雅を慰めるつもりでいた天真は、早くも形を変え始めている自身を気に掛けながら、負けじと、友雅の衣に手をかけた。
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