遙か1
□ばれんたいんでー ☆
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今日は、女性が殿方に贈り物をして、想いを伝える日だと、神子から聞いた。
それを聞いた永泉は、朝から落ち着かないままいた。
女性ではないけれど、意中の殿方に想いを伝えて、より睦まじくさせていただきたい。
けれど、誰に相談すれば・・・。
読経にも身が入らず、少々足早に、詩紋の元へ向かう。
年若いながらも、神子と同じく異世界よりの来客。
きっと、詳しいに違いない。
「あの、詩紋殿」
「永泉さん?こんにちは。どうかしました?」
傾き始めた陽射しを受けた金の髪が、眩しい。
「あの、今朝、神子がおっしゃっていた、・・・あの」
「ああ。バレンタインのことですね。女の子って、そういうの、好きだし敏感だから」
相変わらずの聡さに、永泉は心の内で感謝していた。
「バレンタインが、どうかしました?」
「えっ、と、その・・・。女人から殿方でないと、いけないのでしょうか。・・・その、想いを、伝えるのは」
さすがの詩紋の頭でも、直ぐに永泉の言わんとせんことが解らず、間が空く。
その間に、永泉は、自分が口にしたことに、俯き、顔を耳までも真っ赤に染めていた。