遙か1
□散華★
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桜の怨霊の一件が落ち着き、明日には友雅も土御門に出てくると言う日。
天真は、友雅の自邸にいた。
門前で迷っていると、すっかり顔馴染みの門番や女房たちに歓迎され、あれよあれよと言う間に、友雅が静養している寝所へたどり着いてしまっていた。
部屋の真ん中には、殿上人にふさわしい帳台。
長身の友雅をすっぽり包む立派な帳台の置かれた寝所を隠すように、几帳や簾が囲んでいる。
直接の光を避けた寝所。
立ち込めた友雅の薫り。
友雅らしい、趣のある調度品。
掛けられた、大きな牡丹の衣。
それだけで、天真の気持ちは、充分すぎるぐらい昂った。
友雅と今のような関係になってから、ほぼ毎日通いつめていた場所。
だから、数日来なかっただけで懐かしさを感じてしまう。
「・・・天真かい?」
帳台の中から、あの艶のある声に呼ばれる。
「・・・うん。様子、見に来たんだよ。」
普段通りを装って、ぶっきらぼうに答える。
本当は、名前を呼ばれただけで、全身が蕩け出してしまいそうになる。