遙か1
□雨ふって★
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清々しく晴れ渡った、夏の土御門の朝。
龍神の神子が八葉二人を伴い、街へと出掛け、待機していた残りの八葉たちも次々と発った。
その部屋に、永泉ひとりになるのを見計らって、天真は声を掛けた。
「永泉、今、ちょっといいか?」
「天真殿。如何なさいましたか?」
「あー・・・その・・・京の散策とか、行かないか」
「えぇっ・・・と」
「あ、嫌ならいいんだ。・・・気が向いたら声掛けてくれ」
「はい・・・」
端から見れば何気ないやり取り。
けれど、愛を交わしてから日の浅い天真にとって、この何気ない会話のひとつひとつも、それなりの勇気の塊。
(それなりに振り絞ってみたのに、空振りかよ)
肩を落としながら自室へ戻った天真は、小さくため息をつく。
ふと、そんな脳裏に、あの夜の悩ましい永泉がちらつく。
(な・・・っ!?)
透けるような白い肌が、上気して染まり。
細い百日紅の小枝のような指が、必死にしがみついてきて。
最後は、悲鳴に近い啼き声をあげて。
吐き出した白濁を、顔にまで飛ばして。
朝日の元で、次々といかがわしいことを思い出してしまった天真は、頭をブルブルと左右に振り乱し、その勢いのまま、部屋に大の字に寝転がってしまった。
誰かに頭の中を覗かれていたわけでもないのに、顔から火が出そうになっているのが、鏡を見なくても、よくわかる。