遙か3
□禁断の檻 ★
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満月が昇りはじめた頃、静かに、塔の最上階に来客がある。
長身に、銀の髪を持つ彼は、今宵もまた、物音をたてることなく、格子戸の施された階へ、滑り込んでいく。
決まっているわけではないが、二・三日毎に、そこへ向かう。
それに、将臣が気付いたのは、つい最近のこと。
(まさか、敦盛に、酷いこととか、してねぇだろうな・・・)
感の鋭い相手に気付かれぬよう、こちらも、物音をたてぬように、少し空けて、後を追う。
灯りがあるとは言っても、月の光も充分に届かない時分は、足元も見えにくく、やっとの思いで、目的の場所へたどり着いた。
襖にぴったりと耳をつけるけれど、何も聞こえない。
不思議に思った将臣は、襖を二寸ほど開ける。
微かな隙間からは、僅かな月の光と、話し声のようなものが、溢れてきた。
逆光のせいで、影絵のようにしか見えないけれど、大きな影と小柄な影が見えた。
少しずつ目が慣れてくると、影の正体が、知盛と敦盛だとわかる。