遙か3
□踏襲 ★
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真夏の熊野。
八葉が揃って、初めての夜。
夕食を済ませて、それぞれが、思い思いに過ごしていた。
晩酌を楽しんだり、蛍を眺めたり、涼をとったり。
そんな中でも、今日八葉だとわかった将臣は、引っ張りだこにされていた。
「将臣。お前の太刀筋はなかなかの物だ。普段、どのような稽古をしているか、教えてくれないか」
「そんな特別なことなんかしてねぇっての。現場で鍛えられたクチだからな」
「将臣君は、医学には明るいのですか?」
「まぁ、簡単な手当ぐらいならな。あんまり詳しくねぇから、時々教えてくれよ、弁慶」
「色恋の方はどうなんだい?その見てくれじゃあ、豊富なんだろう?」
「あのなぁ〜。そんな余裕、あるわけないだろ」
「そうなのかぃ?」
「そうだよ」
そんな様子を、酒を煽りながら、景時は横目でちょくちょく窺う。
今までずっと気になっていたことが、今夜解消される、かもしれない。
いや、でも・・・。
いつもより早い調子で呑み続けた景時は、珍しく酔いつぶれて、縁側で眠ってしまった。