遙か3
□新天地で☆
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新緑が色濃くなり、季節が進むのを感じる頃。
将臣は、敦盛と街へ出ていた。陽射しがあるけれど、薫風が気持ちいい。
「将臣殿。今日は、どちらへ向かわれるのですか?」
「お前の服を買いに、な」
「私の服、ですか」
「今日は、めちゃくちゃに甘やかしてやるから、何でも言えよ」
「あ、はぃ…」
手を繋いで、人混みを二人で歩く。
あの戦続きの世では考えられない、平和な時間に、将臣は、満足していた。
少し前までは、何の疑問もなく過ごしていたのに、あれを経験した今は、何とも言いがたい心地よさで。
この人混みでは、男同士で手を繋いでいても、咎めるものなどいない。
きっと、敦盛が男子だと気付かれていないだけ、かもしれないけれど。
「どんなの買うかな〜。がっつり夏物ってのは早そうだし。でも、叩き売りの春物ってのも、お前に着せたくないし…」
「あの、私は、裸でなければ、何でも。…将臣殿が選んでくださるものなら、何でも」
さらりと出てきた言葉に、思わず、将臣の足が止まった。
同時に、敦盛の脚も止まる。
ただ見つめ逢う二人を避けるように、人が流れていく。
「…お前、そんなだったか?」
「もっ、申し訳ございませんっ」
「謝んなよ。嬉しいだけだって」
頷く敦盛の横顔は、項から耳まで赤くなり、何処か誇らしげだった。