裏僕

□貴方にはかなわない★
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彼が、俺の名前を呼ぶ。
俺も、彼の名前を呼ぶ。

彼に名前を呼ばれるそれだけで、全てが報われる。救いになる。生きていく意味になる。
それは、いつの世も変わらないこと。


何度となく生まれ変わって、性別も変わって、名前も変わって。
それでも、必ず巡り逢って、黄昏館で共に過ごすようになる。













「なあ、愁生」
「・・・何だ、焔椎真」


デュラスとの闘いの合間を縫って、学校の課題や予習をする。
俺が机に向かっているのに、こいつは、暢気にソファーに寝転んでゲームをしている。
コイツに危機感はないのか。成績にばらつきがあるのに。


「・・・もう、天白との儀式、は、終わったのか?」

また、こいつは・・・。


「天白とのが終わったんなら、夕月とも・・・っ」
「煩いっ!」


戒めの手なら、誰もが通る儀式。

絶対的存在である、祗王一族の総帥と神の光に、誓いを立てる儀式だ。
夕月が黄昏館に来たのは最近だから、立て続けに、儀式を強要されていることになるな。


「お前もツヴァイルトだろ。いちいち言わせるな」


総帥との儀式は、昔の元服を迎える頃。今の時代にあわせて、現世では、中学を卒業する頃に行われる。
それに、男女の違いなどで特例はない。
現世でも前世でも、経験したし、してきている当然のことだ。


「お前だって、どちらも済んでるだろ」
「・・・夕月とは、明日、するんだ」
「そっか。無茶苦茶して、夕月を壊すなよ」


胸の奥が小さく痛む。
こんな儀式なんて、何度となく、こなしてきているのに。
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