裏僕

□贖罪の如く★
1ページ/3ページ





‐遅ればせながら、只今参上致しました‐




自然と、初対面の相手の前世での名前がこぼれた。
膝をついて、告げられた。
そして・・・。





衝撃的すぎる初顔合わせだった。


あれから、黄昏館に帰ってきて数日も経つけれど、何かが、つっかえたままスッキリしない。
でも、かけがえのない絆で結ばれた仲間なのだから、避けていてはいけない。



律儀な夕月は、入浴を済ませてから、斎悧の元へ向かった。
少しでも親睦を深めるためには、一対一で話でもするのが、一番だろうと踏んで。











「斎悧さん」

浴室から続く長い廊下を抜けて、談話室に出ると、二人掛けの長椅子にいる斎悧を見つけた。




呼ばれた斉悧は、雑誌を膝にのせたまま、動かずにいる。

首をかしげながら近付いて、納得がいった。
どうやら、この20分ほどの間に、眠ってしまったようだ。

(俳優さんの仕事を片付けながら、戒めの手としての任務もこなして・・・)

斎悧に近付くと、爽やかなアップルミントの薫りがすり抜けていく。
確か、リアから押し付けられたボディーソープをしぶしぶ使っていると、言っていたっけ。


ルカとは違う甘さだけれど、駆け抜けていく馨りに、一瞬、夕月の全身が泡立った。










斎悧の隣りに掛けた途端、軋む音がしたけれど、目を閉じたままでいる。

顔を限界まで近付けてみても、動き出す気配がなく、規則的な寝息だけが返事をする。
どうやら、熟睡してしまっているらしい。



ルカと同じぐらい長身で、整った優しい顔立ち。
綺麗な肌と、長い睫毛、高く通った鼻筋、シャープな顎のライン。
夕月が、思わず見とれてしまっていた、その時だった。










「如何されました、姫?」
「あ、あの、お話、したくて・・・」


急に話し掛けられ、狼狽える夕月。


「姫から、接吻のお誘い頂けるとは、身に余る光栄」
「もうっ!僕、男ですよ」
「ははっ!冗談だよ」
「・・・ありがとう、ございます」



斎悧と出会ってから日が浅いけれど、冗談めいてからかわれても、不思議と悪い気はしない。


これも、理屈を抜きにした前世から組み込まれた本能が、安心している証拠なのかもしれない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ