遙か4

□あこがれ ★
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とあるその日も、布都彦は、大浴場に行くのをためらっていた。


貧弱な自身を多くの人に見られるより、あの人の巨大な局部を見てしまって気持ちが高ぶってしまうのを知られたくなくて、躊躇してしまう。

特に、憧れている人と同じぐらい巨大なモノを持つ、何事にも敏感なあの人にだけは。
知られてしまうと、きっと、ややこしくて面倒なことになってしまう。





「汗を流しに行きませんか、布都彦?」

道臣の優しい声が掛けられる。


いつでも優しい道臣は、彼らしい、少し小振りだけれど色形の整ったモノを持っている。


「道臣殿・・・」
「最近、何か、悩んでいるようですね」

寝台で、膝を抱えて座る布都彦のとなりに、静かに腰かけてくれる。


「私でよければ、貴方の悩みを聞かせてくれませんか?」



優しく頭を撫でてくれる道臣に、破廉恥な悩みを、口にすることなんて、出来ない。
長い付き合いの道臣にも、言いにくい。







「布都彦、道臣。汗流しに行く、よね」

布都彦が黙り込んでいると、ついにその人が現れた。
二、三度、扉を叩きながら呼び掛けてくる。



「風早。すみません。布都彦が、珍しく悩み込んでいるものですから、放っておけなくて」

ますます言いづらくなってしまった布都彦は、抱えた膝頭に顔を埋めたまま、動けなかった。

扉が開くと、見上げるほどの長身が滑り込んできた。
いつもより幾分砕けた服装で、布都彦の鼓動が早まる。
微かな風に乗って薫る汗の匂いさえ、たまらなくさせる。


「道臣。・・・よかったら、俺に任せてくれないかな」
「ですが、風早・・・」
「俺の方が少し歳が近いですし、話しやすいかもしれませんから」
「そぅ、ですね。それでは、お言葉に甘えて。・・・よろしくお願いします」
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