戦国うたたね

□蝉時雨
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誰かにとって当たり前のことでも
違う誰かにとっては当たり前のことではない

今まで毎日過ごしていた日常でも
ふとしたきっかけで非日常へと引きずり込まれる



そう、ほんのささいなことで





「茜殿。」


照りつける太陽。
蝉の合唱を聞きながらボーっとしていると遠慮がちに声をかけられた。

声をかけてきたのは暑苦しい武田の中でも、五本の指にはいるほどに暑苦しい人間。

真田幸村だ。

ただでさえ暑いのだから、夏に近寄りたくない部類の人。


「いかがなされた。」

視線を投げ
かけると彼は距離を十分にとったところで腰を下ろした。


「暑い。」


ポツリともらした言葉。


「暑いから夏は嫌いだしなんでこんな暑苦しいもん着てなくちゃいけないんだろうとか思うし上田は軽井沢の近くだし長野だし避暑地じゃんやった涼しいって思ったのに盆地だから暑いし夜は涼しいからまだましだけどとにかく暑くて暑くていやだ。」


得意のマシンガントークでまくし立てると、彼は眉を寄せた。


「なにやらよくわからないが、要は暑いのが嫌だと。」
「そういうこと。」


丈の短い衣はこのチェリーボーイが断固許してくれない。
はしたない、だとか、破廉恥だとか破廉恥だとか。



あーもう、この破廉恥侍が!!




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