戦国

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ばっと飛び込むようにして入ってきたのは、壮年の男性。
こちらを見て、目を見開いた男ははっとして頭を下げた。

「も、もうしわけございませぬ。」

その行動に度肝を抜かれたことは言うまでもない。
いきなりやってきて、人をみて固まって、それからいきなりの土下座だ。
いったいなんなんだ、ここの人達は。

やたら声がでかい真田幸村。
しかも全身真っ赤だし。
真田信幸はなんか掴みどころのない人だし。
全身迷彩な人もいる。

「(キャラ濃いな、全員)」



どうすることもできず、相手を見ていると男は続けた。

「信幸様に幸村様がいるとは知らず、とんだご無礼を!」
「きにしてない。それよりも、こちらに。」

信幸がそういうと男は恐る恐るやってきて(それでもだいぶ遠いが)朔の方をみた。

そして一言こう言った。


姫様、と。


驚いて、信幸の方をみるとなぜか頷かれた。
頷かれても全くもってわけがわからない。

「彼は和泉宗右衛門。之孝様一の家臣だった方だ。」

信幸がそういうと男、宗右衛門は頭を下げた。

「某、和泉宗右衛門は姫様のお父君でいらっしゃる之孝様にお仕え申し上げておりました。」
「父の…」

そこで、はっとした。
なぜ信幸が「孫」ではなく、「娘」としてほしいといったのか。

ここにはまだ祖父に仕えていた者だっている。
つじつまを合わせなければきっと疑われる。
説明したとしたって異世界など一体誰が信じよう。


「(この人は……)」

信幸によって自分は守られたのだ。

なんて理解力と、先を見越す力があるというのだろうか。
それに自分を信じてくれているし、心が広い。

戦国時代を生き抜いている武将は伊達ではない。
さすが、謀略を得意とする真田の嫡男だ。

頭がキレる。

敵にまわしたくない種類の人間だ、と朔は思った。



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