戦国
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「俺も同じだ、佐助。あの時、死を覚悟した。」
幸村のいうあの時とは、槍を奪われた時であろう。
「お館様のご上洛のその時まで死ねないと思っていた、だが、あの時は他に何も考えられなかった。」
ギュッと朔を抱きしめる腕に力を加えた。
「だから、朔殿が退いた時、すごく安堵した。」
誰もが幸村が突かれると思っていた。
けれども朔は退いた。
それも、誰がみても明らかなほどに怯えて。
「それで、賭けに出たのだ。」
その旦那の賭けは、自分もあの時思ったことだ。
彼女はただ、武器を持ち、攻撃してくる者に反応しているのではないかと。
だから、次にそのまま幸村が朔の元に行った時には何も言わなかった。
彼女は攻撃しない、いや、できないとわかっていたから。
「朔はお前が怖かったそうだ。」
「まぁ、忍、ですし?」
忍だから嫌われることにも怖がられることにも慣れてはいる。
だから、心がチクリと痛んだのは気のせいだ。
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