戦国うたたね

□過去拍手夢
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星が静かに瞬いている。
風もない。


「よ、元気?」
「佐助……。」


少し離れたところに見知った相手が現れると、それまで詰めていた息をはいた。
暗闇の中で誰かが近づいてくるのは、あまり好かない。
口元をおおっていた布を外した。


「相変わらず、ね。」
「そ、相変わらずだよ。」


前に会った時とあまり変わっていない。
ヘラリと笑った彼は、相変わらず忍らしくない。
音もなくそばにやってきた佐助。


「あんたも、変わってない……わけじゃなさそうだね。」
「……。」
「なあ、うちにこない?」


朗らかに言う彼に視線を向けた。


「けっこう楽しいぜ。」
「ふふっ、おかしなことを言うのね。」


佐助から視線をそらして、月を隠した雲を見る。


「私は忍。ただ主の命令を忠実にこなす。」


それだけよ、と告げた茜の目には感情なんてものはない。


「相変わらずだな。」
「そう、相変わらずよ。」


見合った私達は、小さく笑った。


「でも、おしいな、アンタは腕がたつから俺様楽できると思ったのに。」


残念、とつぶやく佐助は笑っているのでそれが本心なのかわからない。
彼は忍なのに、自分の主に対してかなり馴れ馴れしい。


「なら、雇えば?」
「え…?」


自分の知らない主従関係。
知りたいけれども、知りたくない。
驚いた佐助に姫は言った。


「この仕事が終われば今の主と契約がきれるわ。」
「ははっ、じゃあ、旦那にいってみるよ。腕のたつくのいちのことを。でも、急にどうしたんだ?」


佐助の肩に手をそえると、すばやく唇を重ねる。


「佐助のこと、気に入ってるから、じゃだめかしら。」


忍にあるまじく、驚いた顔をした佐助の肩をそのまま越える。


「じゃあね。」


背後にいる彼は動くことはなかった。
再び布を口にあてると、茜は闇に溶け込んでいった。






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