戦国うたたね

□過去拍手夢
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「ふふふ、ふはははっ!」

誰も、止められない。

「ふははははっ!!」

狂ったように手にした武器を目標に向かって繰り出す茜は、鬼といっても過言じ
ゃない。
その姿を幸村が縮まりながら見ていた。

「この茜様から逃れようってか?馬鹿め!思い知るがよい!」

目標が、小さな小屋の中にすっぽりと入ったのをみると、茜はニンマリと笑みを
浮かべた。
そしてそれをつまみあげる。

「ほう、自ら入るとは実に愚か。」
「ひ、茜殿…それは…」

中に入ったものをみて目を細めた茜に、幸村が声をかけた。

「この私の前に姿を現したこいつか愚か!抹殺してくれるわぁあ!!」

そのままごみ袋につっこむと、袋を縛り外に捨てにいく。





「まったくもう、なんでこういうときに佐助がいないかな。」
「さ、佐助がおらずとも、某がいるでござろう!」

手を綺麗に洗った茜がソファーに座ると、幸村がその隣に座る。
しかも、正座なんかしている。

「だって、相手はすばしっこいし、すぐに隙間に隠れるし…」
「そ、某とて」
「幸村がやったら、潰しそうなんだもん。潰したらそのあと誰が片付けるの?」
「うぐっ。」

そう、茜が相手にしていたのは、黒くてテカテカした虫。
茜が最も嫌いなものだ。

「まあ、そう落ち込まないで。」
「だ、だが、役に立たないと言われてへこまない者はおらぬでござるよ。」
「え、だって事実じゃん。」

ピシリと固まった幸村。
茜は、そんなもの知ったことか、というようにソファーにもたれかかった。
しばらくの沈黙。

「拗ねないでよ、幸村。」
「拗ねてなどおらぬ。」

ぷいと顔をそらした行為が、あまりにも子供っぽくて思わずわらいがもれた。

「な、何故笑うのだ!」
「いやぁ、かわいいなぁって。」

頭を撫でれば顔を真っ赤に染める。
茜殿!と怒っても迫力がない。

唸った彼は、何を思ったのか、茜の膝に頭をおいて寝転がった。
「幸村!?」

呼んでも返事が帰ってこない。
不思議に思って見ていると、短い髪の間から見える耳が真っ赤に染まっていた。
わかりやすいな、と今度は声に出さずに笑った。

「ふて寝?」
「違う。」

ふわふわの頭をなでると、幸村は心地良さそうに目を閉じた。

「幸村は、頼りないけど、頼りがいがあるんだよ。」
「…矛盾してるでござる。」

むすっとしたままの幸村の頭をポンポンと、叩いた。

「ま、それが幸村だし。」
「……あまりうれしくないでござる。」

ご機嫌ななめな幸村は、見ていておもしろいのだが、これ以上からかったらさす
かにまずいだろう。

「そんな幸村が好きなんだもん。」

そういったら、幸村は何も言わなかった。
そして、ちょっとだけ身じろぎした。
ひょいと顔を覗き込んでみてみると、満足至極といった笑みを浮かべていた。


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