戦国

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戦国時代において、兄弟と対立することは稀ではなかった。

元の世界でだって兄弟間で仲の悪いことはある。

兄弟だからといって、必ずしも馬が合うとは限らない。


兄弟であっても、自分ではない他者であることにはかわらない。



「どうした、佐助。」

あのあと部屋に戻り、いつものように鍛錬を終えた幸村のところに佐助が現れた。

「朔さん、部屋でじっとしてますよ。」

気味悪いくらいに、と続けた佐助に幸村は苦笑をもらした。

「お前は朔殿に対して警戒のしすぎだ。」
「旦那が警戒しなさすぎなんです。」

手ぬぐいで汗をぬぐいながら言う幸村に、佐助があきれたように返した。


「あんな朝早くに、誰にも言わずに城外に行こうだなんて普通考えませんって。」
「それなのだが、」

佐助のほうを見た幸村。

「なにゆえ、朔殿はそのようなことをする必要があったのか、と思ってな。」

眉をひそめた佐助に幸村は言った。

「いくら神谷の家の者だとわかったからといって、神谷ではすでに現当主のもとできっちりとまとまっている。
今の当主からしてみれば、青い炎を受け継いだ朔殿は、邪魔以外の何者でもない。

そうとわかっているところに朔殿がのこのこといくとは到底思えない。
朔殿は、そのこときちんとわかっているはずだ。」

そこでいったん言葉を区切った。

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