戦国

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「・・・・・朔殿。」


静かに眠っている少女の前で、幸村は小さくその名を呼んだ。
早朝から朔の様子はおかしかった。
佐助だけでなく、他の忍隊の者も朔に対しては、警戒しすぎなほどに警戒していた。

神谷一族は、どこにも属さなかった一族だ。
どうしてなのかは知らないが真田と神谷はいい関係にあり、祖父幸隆の頃より、神谷は真田と共に戦ってきた。



朔は、何も知らないただの少女だ。
自分の力も、重要性も、神谷のことも、この世界のことも。

どうして忍たちがそれほどまでに警戒するのかが、幸村にはわからなかった。
自分の知っている神谷一族は、現当主である者と、今、目の前で眠っている朔だけだ。

それに、力を受け継いだ人間をみるのは初めてだった。



「そなたは、何を背負っておるのでござるか?」



問いかけても、もちろん返事が返ってくるわけでもない。
規則正しい呼吸音を聞きながら、そっとそのほほに手を伸ばした。



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