海賊

□恋バナ
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「アスナの初恋ってマルコ?」


暇なのでお酒でも飲もうかと思って食堂にむかえば、そこにいた男たちはすでに出来上がっていて、新しくやってきたアスナに絡んできた。

もちろん絡んできたのはサッチで、いきなりなんだといぶかしんでいればガシリと肩に腕を回された。
まったくもってめんどくさい酔い方をしたものだ。


「マルコだろ?だってそうだろ?あんだけ昔っからマルコマルコいってんだぜ!?なぁ、マルコ!」


一緒に飲んでいたマルコはさすがにこれだけでは酔わないのか、なんで俺にふるんだよい、とサッチの自慢のリーゼントを持っていた空き瓶でぐしゃりとつぶした。
ぎゃああ!俺のリーゼント!といいながら髪の毛を整えているすきにサッチのそばから離れてマルコの隣に座る。


「ありがと。久しぶりに絡まれてどうしようかと思った」
「よい」

マルコ好みの酒を注がれて、それを一口飲めばきつい味が口内にひろがる。
それを顔色一つ変えずに飲むのだから、相変わらずの酒豪だな、と苦笑した。


「なーあ、アスナ。さっきの話どうなんだ?」

のしっと肩に重みを感じた。
またリーゼントか、とわずらわしく思ったものの、しかし、リーゼントは目の前でいまだに髪の毛を整えている。
常人よりも高い体温に、まわされた腕に彫られた刺青に、誰だかなんてすぐにわかった。


「エースが酔っぱらうなんて、いったい何を飲ませたの?」


マルコには及ばないものの、それなりの酒豪であるエースがべろんべろんに酔っている状況に自然と眉がよる。


「一気にこれをのませたよい」


そういって口角をあげながら笑うマルコが持つお酒はかなり度数のきついもの。
これをストレートで飲ませるなど、エースを殺す気なのだろうか。
ヒクリと口がひきつった感覚がした。


「ちょっと、エースを殺す気?」
「相談にのってやってたら、エースが勝手にいっきにあおったんだよい」
「エースの恋バナだぜ!このエースが!」

食欲しかねぇと思ってたのによ!と馬鹿笑いを始めたサッチに向かって、背中にのしかかっているエースが火銃をとばす。
間一髪でよけたサッチにエースは消し炭にしてぇ、と呂律のまわらない口調で言った。
理性までふっとんだわけじゃないらしい。


「あ、それは私も聞きたかった」


素直にそういえば、だろだろ!?というサッチ。

おっさんのくせに恋バナでこれだけテンションがあがるとか、いったいなんなのだ。
だが、エースはちらりとアスナの横顔に目を向け、そのまま肩に顔を埋めた。

「関係ぇねぇだろ」

ぶっきらぼうに言い放たれた言葉に、マルコが踵落としをキレイに決めエースは床に激突した。
ピクリとも動かないエースはどうやら落ちたらしい。

「マルコ、やりすぎ」
「こいつがあまりにもバカだからだよい」

何を思っているのかはわからないが、マルコは呆れはてたというように酒を飲むし、サッチはバカだなぁと笑っている。

(初恋は実らないというけれど…)
 

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