海賊
□誕生日
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誕生日おめでとう!とむさくるしい兄どもに祝われる。
白ひげに入って、誰かの誕生日のたびに、宴会が開かれる。
予算の都合上その日その日というわけにはいかないから、二週間に1度は必ず大きな宴が開かれている。
だが、新年のこの日だけは特別だ。
年越しから用意され、日付が変わるとともに誕生日が祝われ、太陽が昇ると新年を祝う。
クルーにとっては一年の中でも一大イベントだ。
誕生日が目的というよりも、もはや飲んで食べることのほうが主な目的となっている。
それでも、誰もが祝いの言葉を忘れないし、互いに楽しんでいる。
みんなから、おめでとうと口々に言われる、そんな中で、ふっと初めて笑顔で祝われた時のことを思い出した。
生まれて初めて、笑顔で祝われた時のことだ。
胸に温かいものが広がって、みょうにくすぐったくて、でものどの奥がツンとなった。
あの時のことは一生忘れることはない。
「あ!いたいた!エース!!おめでとう!!」
片手に大皿を持ち、もう片方にはジョッキをもったアスナがやってくる。
隣にいるだけで、心地よい人。
もう二度と、手放さないと心に決めている人。
「はい。お誕生日おめでとう!」
差し出された大皿には、あの日と同じようにケーキがのっていた。
「ありがとな」
「ふふっ、どういたしまして」
あの時は素直に言えなかった言葉でも、今はするりとでてくる。
「うめぇな」
「ありがと」
ガツリと互いにジョッキをあてる。
隣にすわったアスナが、エースの肩によりかかる。
(大人になっても、変わらない二人の距離)
(互いに心地よくて、大切で)