君のいる夏

□君との夜
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 玄関のチャイムが鳴って、瑞希の心臓がドキッと大きな音を立てた。

(うぅ〜。緊張する・・)

 メールや電話をすることはあっても、夏休みに会うのは初めてだ。最後に見たのはあの後姿。
 一度鏡を確認してから、瑞希は玄関のドアを開けた。

「はい・・、あ、いらっしゃい。」
「・・久しぶり。」
「うん。久しぶりだね。」

 そこには愛しい恋人の姿があった。夏休み前と何一つ変わっていないように見えるけれど、少し痩せたかもしれない。ノースリーブのシャツから覗く浅黒い腕は前よりも逞しく見える。そして顔を見ると涙が出そうになるのは何でなんだろう。

「暑かったでしょう?入って。」
「あぁ。ありがとう。」

 用意したのはアイスコーヒー。グラスを揺らせばカランッと涼やかな音が鳴る。それを一口飲んでから、チャドは久しぶりの彼女に目を移した。可愛らしい水色のワンピース。髪はお団子にしていて、彼女の細い首が露になっている。触れたい衝動をぐっと抑えて、チャドは口を開いた。

「元気だったか?」
「うん。泰虎は、怪我なんかしてない?」
「あぁ。大丈夫だ。」
「あ、この前の花火どうだった?」
「一護の親父さんがいい席を取ってくれていて、すごい良かった。」
「ふふっ。写メ送ってくれたもんね。綺麗だった。」
「・・来年は一緒に行こう。」
「うん。」

 不意にチャドが隣に座る瑞希の手を握る。

「泰虎?」
「会いたかった・・」
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